BATTLE
ROYALE
〜 誓いの空 〜
第21話
「よし、出るぞ」
既に貞川家で服をTシャツとジーパン(これは丈夫さを優先した結果だ)に着替えた能代直樹(7番)の声に応じて、石城竜弘(1番)も貞川家を出た。
近くにまだ、やる気の生徒がいたりしたら(大谷俊希(2番)以外にもいるとは信じたくないのだが)危険だから、家を出るのにも神経を使った。
二人は、貞川家の中で(鶴見勇一郎(6番)と東野博俊(8番)の死体は整えてやった)ある程度の今後の行動について話し合った。
「やっぱり、お前が東野に渡されたこれをどうするかだよな」
竜弘は図面らしき紙切れを持って、言った。
この図面がどう影響してくるのかは竜弘にはよく分からなかった。ただ、博俊が直樹に死の直前に渡すほどの物だ。よほど重要な物なのだろう、ということしか分からない。
「そうなんだ…これがどう役立つのか…見たところ、俺たちがつけている首輪らしいけど…」
「そう見える…よな? 俺もひょっとしたらそうかな…とは思ったんだけどな」
「うー…ん」
その時、竜弘はふと思いついたことを話してみた。
「ミヤちゃんなら何か分かるかもしれないな」
「ミヤさんか…この手のものは得意そうだよな」
そして結局、やはりここは機械に強い宮崎紀久(11番)を見つけ出し、この図面から何か脱出のヒントを得るのが得策、という結論に至った(もちろん、他の信用できそうな生徒―竜弘の探している佐野雄一(4番)はもちろんのこと、草川麻里(3番)や松谷沙耶(10番)、山下由里加(13番)、脇坂将人(17番)なども探すことにした)。
「ハックション!」
その頃、宮崎紀久はF−7でくしゃみを一つした。
「何だよ、いきなり…汚ねぇな」
くしゃみがかかった脇坂将人が一言呟いた。
「さあ…? 誰かが俺の噂でもしてるのかもな…何てな」
「お前の噂ー? そんなことする必要ないだろ?」
「そうだな…しかし、横溝が追ってこなくて良かったな」
森木真介(12番)を殺した横溝朋美(15番)は、結局紀久と将人を追ってくることはなかった。それが二人には少々不可解に感じられたが、助かったのだからどうでも良いと思った。
「全くだ。何でだかは分からないけどな…」
「とにかく、これからどうするかを考えよう」
「そんなの決まってるじゃないか、ノリさん。俺たちの目的は…」
紀久がニカッと笑って言った。
「残った1組の仲間たちでの脱出…その通りだよ。将人」
「分かってるんならいいんだ。よし、やってやるか」
「おう」
二人は動き出した。脱出するための方法を探るために。
「…」
山下由里加は、E−2で、民家の窓から海岸を眺めていた。そこは自分の家だった。自分の…山下由里加の家だった。ずっと暮らしてきた、由里加にとっての安らぎの場だった場所だ。
「裕香…ごめんなさい…裕香…」
由里加はまだ、目の前で山吹志枝(14番)に殺された親友の船石裕香(9番)の姿が―生きていたときの姿が浮かんできていた。
―自分があそこでドアに近づくのを止めていれば、裕香は死ななかったのではないだろうか?
そんな思いがひたすら巡る。
裕香は由里加のせいだとは言わなかった。だが、それでも由里加は自分を責めることでしか自己防衛ができなかった。
さらにその裕香を殺した志枝も、最初の放送で裕香の次に死んだとして、名前を呼ばれていた。
「裕香…私はこれから…どうしたらいいのかな…?」
その時だった。由里加が眺めていた窓の外に、人の気配がした。
―誰かが来た!?
由里加は右手にあった裕香の支給武器だったH&Kデトニクスをしっかりと握った。
やがて、その窓を慎重に覗き込む人影が映った。
「あっ、山下さんがいたんだ…そっか…ここって確か山下さんの家だもんね」
そう言った人影の正体は、松谷沙耶だった。
<残り10人>