BATTLE ROYALE
誓いの空


第28話

『ガシシ、ガシシ、ビバガシシ! 暗闇で光る! ガシシ、ガシシ、ビバガシシ! 乗換えが苦手!』
 最初の放送のときと同じ、羽縄とかいう兵士の変な歌が流れてきたのを聞いて、E−5の森の中にいた
宮崎紀久(11番)脇坂将人(17番)は放送に耳を傾けた。
―そうか…もう12時間経ったんだな…。
 二人は今、正直厳しい状況に立たされていた。脱出の作戦は見つからないうえに、さっきまで追いかけていた
佐野雄一(4番)を見失ってしまったのだ。
 もし雄一が
横溝朋美(15番)に会ってしまったら…殺されるかもしれない。
 だからこそ、二人は焦っていた。
『皆さん、お昼になりました。。もう昼飯食べたか? 12時になったので、これまでに死んだお友達の名前を発表します。まず16番、吉岡美佳さん』
 これは、
森木真介(12番)がそう言っていたので分かっていた。そして次は…。
『12番、森木真介君』
―やっぱりだ。
 紀久は思った。ということは真介より前、美佳より後に殺された者はいない、ということになる。
―他に殺された奴は…いたのか?
『13番、山下由里加さん。以上3名。それじゃ次は禁止エリアを発表するので、ちゃんと聞けよ』
「山下さんも…死んだのか…」
 将人が呟く。これでもう、1組の生徒は残り9人。ほぼ半分となってしまった。
『まず、1時から、B−5。3時から、C−1。5時から、F−7。以上です。それじゃまた、生きてたら次の放送で』
「もう残りは9人…か…」
 紀久は呟く。
―何でだろう?
 このクラスは仲が良かったはずだ。誰一人として孤独になる者もいない、皆が優しい(
山吹志枝(14番)は別にしても、だが)クラスだったはずだ。
 それがこんなことになってしまった。どこからこんなことになってしまったのか? 紀久にもその理由など探せない。
「俺たち…本当に皆で生きて帰れるかな…?」
 将人が珍しく、弱音を吐いた。ひょうきん者の将人ですらこうなってしまう…。それがプログラムなのだ。
「生きて帰れるって。絶対に俺が脱出の方法を見つけてみせる!」
 その時だった。
「そこに誰かいるの!?」
 突然声がした。念のために紀久はモップを、将人はバールを構えた。しかし、その声の主が言った。
「私、松谷よ。私はやる気じゃないわ。そっちには誰がいるの? 何人?」
 どうやら、相手は
松谷沙耶(10番)のようだった。紀久は安心した。沙耶は人殺しをしようなんてことを考える人間ではない。
「将人、武器を下ろせ。出るぞ」
 そう言って紀久は将人にバールを下ろさせ、森の外に出て行った。外では、沙耶が手に持った小型の自動拳銃を構えて立っていたが、二人を確認するとその手を下げた。
「宮崎君…脇坂君」
「何か…久しぶりって感じだな」
「…うん」
 その後、紀久と将人は、沙耶と情報の交換を行った。
大谷俊希(2番)がゲームに乗ってクラスメイトを殺して回っているということは二人も知っていたが、草川麻里(3番)まで一緒だった、というのが少々不可解だった。
「変だな…? 俊希は殺して回ってる。なら草川は何のために一緒にいるんだ?」
「そう…だな」
 すると、沙耶が口を開いた。
「麻里は言ってた。大谷についていく、大谷のために戦うって…」
「大谷の…ため…じゃあ…大谷が『権利者』とか?」
「うー…ん…分からないな…」
 結局、俊希と麻里の考えが三人には分からなかった。
「あっ、そうだ! 佐野を探さないと!」
「佐野君を?」
 沙耶が紀久に尋ねてきた。
「ああ…俺たち、横溝が真介を殺すのを目の前で見たって、さっき言ったろ? そのことを佐野に伝えたら…怒って…横溝に会って確かめるって…」
「…ねえ、何で分からないかなぁ…」
「え?」
 紀久は訳が分からず、沙耶に聞き返した。
「あのね、それで怒るってことは、佐野君は横溝さんが好きなんだよ、きっと。だから追い討ちをかけるような真似しちゃ…駄目だって」
「で、でも…横溝が危険なのは事実だし…」
「…そう、だよね。よし、三人で探しに行こうよ」
 沙耶が紀久と将人に言う。
「ああ、行こう。確か佐野は北西へと向かってたはずだ」
 そして沙耶、紀久と将人は立ち上がり、北西へと進み始めた。そして北西に向かってすぐのエリア、D−4に入ったところだった。
「なあ、これ…」
 将人が呟いた。
「どうした?」
「これ…血痕じゃないか…?」
 そう言って将人が指差した地面には、ごくごく新しい血痕が残っていた。そしてそれは点々と続いていた。
「ひょっとして…佐野の…?」
「佐野が危ない!」
 紀久が駆け出す。それに将人と沙耶が続く。
―佐野…無事でいろよ!

                           <残り9人>


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