BATTLE ROYALE
誓いの空


終盤戦
Now 8 students remaining.

第31話

 ちょうど、プログラム会場の殿場島では佐野雄一(4番)が死亡した頃。
 県営体育館の外で、原井康幸は周囲の景色を見ていた。
「……」
 そんな康幸を見て、大神真義と丸川洋介、そして同じクラスの古谷裕子(ふるやゆうこ)が外に出てきた(裕子は
能代直樹(7番)の幼馴染で、直樹に好意を抱いていたのを、康幸たちは知っていた)。
「何してるんだ? 康幸…」
 真義が尋ねる。
「…いや…朝方に、笹川先生を見てさ…。俺、夜に笹川先生を叩いちゃったじゃん? だから…酷いことしたな…謝りたいなって思ってたんだ。先生だって…助けられないのは分かってたはずだしさ」
「…それも…そうだな」
 洋介が俯き加減に答える。
「それで俺…朝、外に出たんだ。笹川先生の家に、行って謝れないかなって思って…そしたら、そこの道を…」
 康幸はそう言って体育館の前の道を指差した。
「セダンが通ったんだ。その後部座席に…笹川先生がいたんだ。運転してたのは…貞川さんだった」
「貞川さんが?」
 裕子が驚いた感じで言った。貞川永次とは、康幸たちの間でも、よく分からない島民とされていたのだ。
「何で、貞川さんが笹川先生を…? それで、そのセダンは何処へ行ったんだ?」
 真義が、康幸に尋ねた。
「…あの方向なら…東のほうだろうな。俺たちの島が…ある方向だ」
「俺たちの…島…?」
 洋介が言う。その台詞には、ほんの少しの疑問が感じられた。
「これは、俺の勝手な想像かもしれない。だけど…ひょっとしたら、笹川先生は貞川さんと一緒に、島へ行こうとしてるんじゃないのか? 俊希や能代たちを助けるために」
 これはもちろん、邪推かもしれなかった。しかし、そうとしか思えなかったのだ。笹川恭子という教師は、心の底から1組の生徒を大事に思っていたから。
「なら…私たちも行きましょうよ」
 突然、裕子が言った。
「で、でもどうやって? 俺たちにそこまで行く移動手段だって…」
「お金があるんだから、電車で十分でしょ!?」
 洋介の問いを途中で遮って、さらに裕子が言う。
「…古谷の言うとおりだ。それに俺は…島に行きたい」
 康幸は自分の思いをぶちまけた。
「俺は島に行きたい。できれば、皆を助けたい。笹川先生がそれを考えているのなら、その手助けがしたい」
 続けて言う。
「で、でも…そんなことしたら俺たちも反逆者になっちまう!」
 洋介が言う。確かにその通りだと、康幸も思った。1組の生徒たちの脱出の手助けなどしようものなら、康幸たちも反逆者となり、政府から追われる身となるはずだ。
だが、それは貞川永次と笹川恭子も同じことだとも思った。
すると、真義は静かに言った。
「確かに手助けをしたら、反逆者だ。でも…島の近くまで行ったが、脱出した生徒を見つけられなかった、だったら問題はないんじゃないか? 俺たちが見落としただけだろ?」
「そうよ! そうすればいいのよ!」
 まず裕子が真義の意見に賛同した。康幸も異論はなかった。それなら、別に問題はないだろう。
「残るは洋介だけど、どうする?」
 康幸は隣にいる洋介を見やった。そして洋介は、決然とした表情で、口を開いた。
「揃いも揃って俺を仲間ハズレにする気かよ? 冗談じゃない、俺も行く! 気持ちは固まった」
「よし、それじゃあ、行こうぜ!」
 四人は、出発の準備をするために、体育館に戻っていった。

 その頃、殿場島が見える港にセダンを停め、笹川恭子と貞川永次は立っていた。
 こうして見える島で、1組の生徒たちは、殺し合いを強要されているのかと思うと、恭子は胸が苦しかった。
「さて…着きましたよ。それじゃ、トランクに載せてあるものを出してもらえますか?」
 永次がそう言ったので、恭子はすぐにセダンのトランクを開けた。そこにあるものを見て、恭子は驚いた。そこにはライフルやら、ハンドガンやら、とにかく様々な銃火器が入っていたのだ。
「笹川先生はそこのハンドガン…ベレッタM92Fっていうやつです…それですそれです。それとライフルを一つお願いします…」
「でも、ライフルって重いんじゃ…」
 恭子はそう言いながらベレッタを持ったあとでそのライフルを抱えたが、意外に軽いことに気がついた。
 恭子がその軽さに驚いているのに気がついたのか、永次が言った。
「それはステアーっていうものでして…プラで出来てるから軽いんですよ。それじゃ、行きましょうか。島まで結構ありますけどね」
 そう言って永次は残りの武器を抱え(結構な重さのはずだったが、永次はそれを運んでいた。結構鍛えているのかもしれない)、近くに置いてあるボロ船に近づいた。
「いや、助かった。これは撤去されてなかったみたいですね。わざわざボロく見える様に見た目を変えておいてよかった」
「これ…貞川さんの、ですか?」
「はい。プログラムのことが分かってすぐに購入したんです。政府に撤去されないよう、使用不能のボロ船に偽装しておいたんです」
―この人、凄い…。
 そして永次はその船を港に出した。
「さあ、乗って下さい。島へ向かいましょう」
「は、はい」
 恭子は慌てて船に飛び乗った。

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