BATTLE
ROYALE
〜 誓いの空 〜
第38話
スタート地点のすぐ横のエリア、D−5辺りだろうか。
宮崎紀久(11番)に言われて逃げた石城竜弘(1番)、能代直樹(7番)、松谷沙耶(10番)はようやくそこまでやって来て、腰を下ろした。
鬱蒼とした雑木林。その木々の隙間から殿場中学校が見える。
―何としても、脱出しなきゃならない。
竜弘の心は、その思いでいっぱいだった。
自らの知らないところで殺された佐野雄一(4番)、鈴木政仁(5番)。竜弘たちを身を挺して逃がしてくれた脇坂将人(17番)、宮崎紀久(11番)。
彼らの思いに応えたい。そのためにも脱出したかった。
それが唯一の竜弘の願いだった。
その時、ぽつりと沙耶が言った。
「ねぇ、もし脱出できたらさ、何する?」
その声は、脱出作戦がガシシたちに漏れてしまわないように脱出作戦があることを隠そうとしている感じだった。
「…考えたことなかった」
それが竜弘の本音だ。
脱出したいとは考えていた。だが、その後のことを考えてはいなかった。
「俺は米帝…アメリカに行こうかと思ってる」
直樹がそう言った。
「アメリカ?」
「やっぱり、巷では自由の国として評判だからか?」
竜弘の問いに、直樹が答える。
「そうじゃない。俺は自由すぎるのも問題だと思ってる。自由の裏は、無秩序だからな。ある程度の秩序はいるんだよ。けど、束縛されすぎのこの国よりはマシだと思う。だから俺はアメリカに行きたい。先のことはそっちで考えたい」
「……」
竜弘は何も言わなかった。
「いいね…アメリカか…。私も素晴らしいところ、とまでは思ってなかったけど、行ってみたかったんだよね」
沙耶が天を仰ぎながら呟く。
そこで竜弘は言った。
「なあ、いっそのこと全員で行かないか。アメリカ」
「なるほど…」
直樹が呟く。竜弘は続ける。
「ここにいる3人、それから…できれば俊希と草川、朋美も」
「そう、だね…後の3人とも脱出したいなぁ…」
そこで竜弘は、一つの疑問を口に出してみた。
「何で…俊希はやる気になっちまったんだ? そういう奴じゃないって思ってたってのに」
「…麻里の、ことだと思う」
沙耶が俯いて、言った。
「草川の?」
直樹が言う。直樹も俊希のやる気になった理由は気にしていたようだ。
「私、気付いたんだけど…あの二人ってお互いに好き合ってるみたい」
「え!?」
竜弘は驚いた。俊希が草川麻里(3番)に好意を持っている。そんなことは竜弘は考えていなかった。
「だとしたら…説明がつく。多分草川は、『権利者』になったんだ」
直樹が一言、言った。
―『権利者』に、草川が!?
竜弘は、『権利者』のことを失念していた自分にようやく気が付いた。そこで竜弘はもう一度『権利者』について考えてみた。
『権利者』のルール。
@―『権利者』は24時間以内にプログラムが終了しない限り生還は出来ない。
A―自分で他の生徒を殺すことを強制はしないが、『権利者』は自分の手でプログラムに決着をつける、つまり、最後の生徒を『殺す』必要がある。
B―24時間以内に決着がつかなかった場合、『権利者』の首輪は爆発。それ以後は通常ルールで行う。
C―『権利者』を殺した生徒がいた場合、今度はその生徒が『権利者』となる。その際に紙を奪う必要はない。『権利者』の交代は放送で知らせる。その場合、そこからもう一度24時間カウントを行う。
「恐らく俊希は、自分と草川の二人だけの状態に持ち込んだら、草川に自分を殺させるつもりだ。そうすれば『権利者』の草川は生きて帰れる」
直樹がそう言った。
「じゃあ、麻里まで人に銃を向ける理由は?」
「多分、草川は俊希の考えに気が付き、俊希を殺すことだけは避けようと思った。そこで、最後に自殺して俊希を優勝させようと思っているんだ。そのために戦っているんだと思う」
「おいおい、そんなのってないぞ!?」
竜弘は思わず大声になっていた。
「そんなの、哀しすぎるよ…」
沙耶が言う。
「ああ、だからまずは、二人を何としても止めよう。二人にそんな悲惨な結末を辿らせちゃいけない」
「よし、やろう!」
直樹の言葉に、竜弘は答えた。沙耶も大きく頷いた。
終盤戦終了――――――――
<残り5人>