BATTLE
ROYALE
〜 誓いの空 〜
第4話
ガシシはすぐに、ルールの説明を始めた。
「えぇっと、ルールは簡単です。最後の一人になるまで殺し合う。ただそれだけです。ちなみに君たちが住んでいる島で、今回会場になったこの殿場島の地図が、これです」
そう言っガシシは、島の地図を黒板に磁石で貼り付けた。だがその地図には、妙な区切りがしてあることに能代直樹(7番)は気付いた。
「皆この区切りに気付いたかな? これは、この島をエリア分けしたものです。縦にA、B、C…と数えてHまで。横は1、2、3…と数えて8までになります。この学校はその分け方でいくとD−6辺り、この辺ですね」
そう言ってガシシは、地図のその場所を指で示した。
ガシシはさらに続けた。
「そして、一日0時と6時、つまり一日四回、放送をします。この放送では、それまでに死んだクラスの人たちの発表と、何時から、ここのエリアには入ってはいけません、ということを発表します」
「あの、そのエリアに時間になってもそのエリアにいた場合は…?」
脇坂将人(17番)が立ち上がって、そう言った。
「その場合効果を発揮するのが…何だっけ?」
「首輪です、ガシシさん」
羽縄が言った。
「そうそう、首輪です。この首輪は防水機能も、ショックに耐える機能も揃っていまして、外すことは出来ません。禁止エリアに残っていた人にはその首輪に電波を送って…ボンッ」
唐突なその声に、誰もが驚いた。
「とまあ、首輪の中の爆弾が爆発します。それと、この学校のあるエリアは全員が出発してから20分後に禁止エリアになりますから注意してください」
―なるほど、よく考えてやがる。
直樹は思わず苦笑した。
「しかし、今回は特別ルール、その名も…えぇっと…」
―また忘れたのかこのオヤジ。
「『権利者』です」
「そうそう、『権利者』です。本当は私の口から説明するんだけど、今回はプリントとこのルールに必要なものを配りますから、それを見て知って下さい」
そして羽縄が、ガリ版刷りのプリントと何かの封筒を配り始め、それを直樹は受け取った。そこにはこう記されていた。
―今回の特別ルール、『権利者』は戦闘実験を円滑に進めるためのルールである。
―まず、今配られた封筒の中にはただの紙か、ドクロマークのついた紙が入っています。ドクロマークは一枚だけです。そしてドクロマークを受け取った人が『権利者』となります。
―『権利者』には以下のルールが適用されます。
―@『権利者』は24時間以内にプログラムが終了しない限り生還は出来ない。
―A自分で他の生徒を殺すことを強制はしないが、『権利者』は自分の手でプログラムに決着をつける、つまり、最後の相手を『殺す』必要がある。
―B24時間以内に決着がつかなかった場合、『権利者』の首輪は爆発。それ以後は通常ルールで行う。
―C『権利者』を殺した生徒がいた場合、今度はその生徒が『権利者』となる。その際に紙を奪う必要は無い。『権利者』の交代は放送で知らせる。その場合、そこからもう一度24時間カウントを行う。
―以上である。
―な、何だと!?
直樹は驚愕した。
こんなルールが適用されると、ドクロマークをもし自分が引いた場合、どうなってしまうのか?
間違いなく、やる気になったクラスメイトは『権利者』になったのが自分だと知ったら狙ってくる。いや、そんな奴は全員を殺していけば良いと考えるだろう。
直樹はそう考えていた。
「はいはい、皆落ち着いて。それでは、今から封筒を開けてください。誰にも見せちゃいけません」
―見せるわけがないだろ! もしそいつが『権利者』だったらヤバイだろ!?
直樹はそう思いながら、封筒を破って中身を見た。
―ただの紙だった。
直樹は自分が『権利者』でないことを知ると、周りを見渡した。ぐるりと見ただけでは、誰が『権利者』になったのかが分かりそうもなかった。
「じゃあ皆確認できたようなので、出発してもらいますが、その前に…」
そう言うと、羽縄とは別の兵士がカートを運んできた。
「このデイパックを渡します。中には水と食料、地図とコンパス、懐中電灯と武器が入っています。武器はそれぞれ、違うものが入っていて、アタリもハズレもありますが、これもハンデを失くすためだから我慢して下さい。それじゃあ、最初に出発する人を決めます。出発順は1番からならその次は2番、といった感じです。それじゃ…」
そしてガシシは、羽縄が用意した箱に手を入れて、中を探り、やがて一つのボールを出した。
「はい、えぇっと、6番の…」
「鶴見勇一郎君です、ガシシさん。読んで下さいよこのくらい」
「はいはい。それじゃ6番の鶴見君からです」
すると鶴見勇一郎(6番)が立ち上がり、ガシシのもとへ歩いていった。
―よかった。勇一郎はまだ冷静なようだ。
そして勇一郎はデイパックを受け取ると、出口のところで振り返り、直樹と東野博俊(8番)に向き直って、出口の外を指差した。
―ん? あれは…外で待ってるってことか?
そして勇一郎は外に出て行った。
<残り17人>