BATTLE
ROYALE
〜 誓いの空 〜
序盤戦
Now17students remaining.
第5話
「次は7番、能代直樹君」
そう言われて、能代直樹(7番)は立ち上がった。
先程、鶴見勇一郎(6番)はサインを出してくれた。おそらく、勇一郎は直樹と東野博俊(8番)を待っていてくれるだろう。
直樹はそう信じて、前へと進み、デイパックを羽縄から受け取った。
そして、出口へと向かった。その時、ガシシが言った。
「今の意気込みを教えてくれ」
直樹は立ち止まり、ガシシのほうはひとつも見ずに言った。
「俺は殺しあったりはしない、絶対に」
そして直樹は出て行った。後ろからガシシが「そんなこと、あるわけないだろ」と言ったのが聞こえたが、直樹は完全に無視した。
廊下は暗かった。いくら真夜中でも、月光ぐらいは差し込むはずなのに、廊下は殆ど真っ暗だった。
直樹は疑問に思って窓に近づき、そして全てが分かった。廊下の窓にも教室と同じように鉄板で覆われているのだ。
―何の意味があるって言うんだ?
そう思いながらも直樹は廊下を歩いた。教室は1階にあるから、すぐに玄関が見えた。直樹はそこで一旦立ち止まった。
玄関の周りにも兵士が数人いるのが確認できた。どの兵士も魂の抜けた抜け殻のように直樹は感じた。
そして直樹が玄関を出ると、声がした。
「おい、能代!」
玄関の死角にあたる所から、鶴見勇一郎が直樹に向かって呼びかけていたのだ。
「勇一郎!」
直樹は勇一郎のところまで走った。
「やっぱり待っててくれたのか、勇一郎」
「まあな」
「なあ、ところでお前、どうだった? 『権利者』」
すると勇一郎はその場に座り込み、ニカッといつものように笑うと、言った。
「なるわけないじゃん。なってたらお前を待たずに行くか、この場でお前を殺してるよ」
「そりゃそうだな。ところでお前…武器は?」
「あっ俺? 俺はこれだよ…」
そう言って勇一郎は懐から一丁の大型回転式拳銃を出して、直樹に見せた。
「コルトパイソンって奴らしい。こんなでっかい銃、俺らみたいなシロートに扱えるかっての。んで能代は?」
「俺は…何だろ? まだ確認してなかったんだ」
「おいおい、自分の確認する前に人の武器確認してどうする」
「そう言うなって…これだな、多分」
そして直樹はデイパックの中から一丁のライフルを見つけ、取り出した。付属の説明書を見てみた。
「ステアー…AUGって銃らしいな。モデルガンじゃなさそうだ。弾もついてる」
「そっか…やっぱり本当のプログラムなんだなぁ…」
勇一郎はそう呟いた。その時、誰かが玄関から出てきた。
「博俊か?」
直樹のその呼びかけに現われた博俊が反応し、二人のところに駆け寄ってきた。
「能代、勇一郎…やっぱり待っててくれたのか」
「当たり前だろうが」勇一郎が答えた。
「お前、能代と同じこと言ってるぞ」
「え? ホントに?」
そう言うと博俊は笑った。
「ところで、博俊の武器は何だ? 俺たちは揃って銃だったけど」
直樹の質問に博俊は、慌ててデイパックを探った。そして一つの洗剤を取り出すと、苦笑いしながら言った。
「クレンザーだよ。酷い武器を渡すなぁ」
「全くだ。ところで、これからどうする?」
勇一郎が言った。そこで直樹も、様々なことを考えた。
―まずは、誰が信用できるか、できないか、だ。
―石城竜弘(1番)、佐野雄一(4番)、鈴木政仁(5番)と大谷俊希(2番)は絶対に信用できる。草川麻里(3番)はどうだろう? 俺は特に付き合いが無かったから分からないな…。
―船石裕香(9番)と山下由里加(13番)は…微妙だな。それにあの二人と合流すると、もれなく山吹志枝(14番)もついて来るはずだ。
―あいつはちょっとな…意地が悪すぎる…。やる気になっていてもおかしくはない…。それに吉岡美佳(16番)も危ない…。
―この二人がいるとなると、竜弘たちや俊希、それに宮崎紀久(11番)みたいな信用できるメンツと合流が難しくなるし…。
「どうするよ、能代」
勇一郎が問いかけてくる。しばらく悩んだ末、直樹は結論を出した。
「この三人で行動しよう」
「えっ、でも委員長や大谷、ミヤさんを置いて行っていいの?」
博俊が不安そうな顔で言った。
「でも博俊、その間には山吹や吉岡みたいな、ゲームに乗りかねない連中がいるんだ。ここは待たないほうが得策だと思う」
「そんな…皆で合流して、脱出の方法を考えようって言えば、仲間になってくれるよ」
珍しく博俊は食い下がってくる。その時、勇一郎が言った。
「博俊、それは理想が過ぎると思うぞ? 皆死にたくないんだ。脱出なんて夢みたいなことできるはずないって思うと思う。だから俺は、能代の考えに賛成だな」
「う…ん」
「博俊、いいか?」
直樹は博俊に確認を求めた。
「…分かった」
「よし、話は決まった。これ以上ここにいる理由はない。移動しよう」
そう言って、直樹は立ち上がった。勇一郎と博俊もそれに続いた。
「次の船石が出てくる前に行くぞ」
そして三人はその場を立ち去った。
<残り17人>