BATTLE
ROYALE
〜 仮面演舞 〜
中盤戦
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第23話
ふと、庄周平(男子10番)の眼に日差しが差し込んできた。
―朝日 ?えっと…今はじゃあ、朝、か…。そういえば俺たちは…!
―プログラムに、参加させられたんだ。
そのことを思い出したところで、周平はその身を勢いよく起こした。隣に座り込んでいる多津美重宏(男子13番)が周平の方を向いた。
「よう、起きたか?」
「重宏? 俺…なんで寝てたんだっけ?」
「寝ぼけてるな、お前。玉島に会った後、お前がここで一旦休もうって言って、交互に仮眠を取ることになっただろ?」
重宏にそう言われて、周平はようやく全てを思い出した。
玉島祥子(女子8番)に合流を断られ、彼女と別れた後、しばらくの間西大寺陣(男子8番)を探していたが、結局陣は見つけられなかったし、誰かと出会って陣の情報を手に入れることも出来なかった。
そして歩き続けた結果、H−2エリアまでやってきた二人は、集落の外れにあった民家に侵入して、休憩することにした。その後、交互に仮眠を取ることにした二人は、最初に周平が仮眠を取ることにしたのだった。
そして今、周平と重宏はその民家のリビングにいた。床にはカーペットが敷かれ、そのおかげで寒さは少しばかり和らいでいる。
「…どのくらい、寝てた?」
「ざっと、一時間ちょっとってところかな」
重宏が、そう答えて、少しだけ笑んだ。その眼には疲れがほんの少しだけ感じられた。そんな重宏を気にかけて、周平は重宏に言った。
「なあ、重宏も休んだらどうだ?」
「いや、いいよ。もうすぐ6時…例の放送の時間だからな」
そう言われて、周平はつけていた腕時計を確認する。5時54分。あと6分で、あの福浜が言っていた定時放送の時間になる。
「そうだ、お前も起きたし、これは返すよ」
重宏がそう言って、周平にベレッタを手渡す。周平が仮眠を取るとき、起きていることになった重宏に、万が一のときのために持たせたものだ。
そういえば、その時重宏は言っていた。『俺が裏切る可能性は考えてないんだな、お前は』と。
確かにそうだった。周平は重宏が裏切る可能性など、これっぽっちも考えてなどいなかった。周平はそれだけ、重宏や陣との友情は固いものだと信じていたし、事実そうだと思っていた。
―あとは、ここに陣がいればいいのに…。
「なあ、重宏…。陣の奴、何処にいるんだろうな? やっぱり、こんな事になるんなら、あそこで待ってれば良かったのかな…?」
周平は重宏に問いかけた。
正直な話、そんな考えがずっと頭を過ぎっていた。あの時、美星優(女子12番)など気にせず撃退してしまい、陣を待つほうが良かったのではないか? と。
重宏がどう思っているのか、それを確認しておきたかった。
「なあ、どう思う?」
「…俺は、あの時の自分の判断は間違っちゃいないと信じてる。それに、お前をあの場から離れさせたのは他ならぬ俺であって、お前自身の考えじゃなかった。だから周平、お前が悩む問題じゃない。悩んでなきゃいけないのは俺の方だ」
そう言うと重宏は、窓の外の景色を眺め始めた。
その時、周平は思った。あの時の判断について思うところがあったのは、むしろ重宏の方だったということに。そしてその上で、もうそれ以上悩まず気持ちを切り替えて、陣を探そうとしていることにも。
「俺たち、これからどうなるんだろうな? どうやったら、皆で脱出できるんだろう…」
「…そのための仲間探しに行くんだろ? それを忘れるなよ、周平」
「ああ、分かってるよ」
―ったく、こいつのほうがこういうときはしっかりしてる…。敵わないな、こいつには。
周平が改めて、重宏の強い精神力に感服していたその時だった。突如、何かのクラシック音楽が聞こえてきた。そして、直後に福浜の声が聞こえた。
『―皆さん、おはようございます。担任の福浜です』
―今となっては、忌々しい声だな。
周平がそんなことを思っている中、重宏は地図を取り出し、鉛筆(私物の中にあったものだ)を用意し始めていた。それを見て、周平も地図と鉛筆の用意を始めた。
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