BATTLE
ROYALE
〜 仮面演舞 〜
第6話
「それではルールを説明しますので、皆ルールに従って、キチンと戦ってください」
福浜が言ったのを、西大寺陣(男子8番)は、自分でも驚くほど冷静に聞いていた。
ついさっき死んだ、太伯高之(男子12番)の死体が目に入る。だが正直な話、高之の死は陣に何ら影響は与えていなかった。
陣は高之や赤磐利明(男子1番)たちのグループが好きではない。だからかは知らないが、悲しみや怒りといった感情は湧いてこなかった。むしろ、あまりにも無様な高之の死に様に馬鹿らしささえ感じる。
そして福浜の説明が始まる。陣は思考をそこでやめて福浜の話を聞くことにした。
「まず根幹のルールですが、単純明快です。最後の一人になるまで殺し合う。それだけです。ちなみにここが何処かと言うと…」
そこまで言っ、福浜はホワイトボードに正方形を書き、いくつかの建物らしきものをその中に書き込んだ。
「ここは、鳥取のとあるスキー場です。そしてこの会場は、このように分けられます」
福浜が正方形の地図に縦横に線を何本も引くと、地図は縦十個、横十個ずつの正方形に分かれた。そして福浜は続ける。
「このいくつかに分けられたエリアを、左上から横にA−1、A−2…、その下はB−1、B−2とエリア分けします。そしてこの建物、スキー場の初級ゲレンデ前のロッジですが、ここは地図の中央…E−5にあります」
E−5エリアに描かれた建物の絵を、福浜は指した。
―エリア分け? 何だそれ?
陣はエリアの存在する意味が掴めていなかった。
「そしてプログラム中一日0時と6時、つまり一日四回、本部となるこのロッジから放送を流します。その放送では、放送までに死んだ人たちの名前と、禁止エリア…何時からこのエリアに入るのは禁止、というエリアを発表します。その禁止エリアに入ってしまった人には、皆さんがつけている首輪に電波を送って、首輪を爆発させます。そう、さっきの太伯君のように、ね」
言い終わった瞬間、福浜の眼がもの凄く不気味に見えた。
そして陣は、太伯高之の死体をもう一度見た。その禁止エリアとやらに入れば、太伯のように首を吹っ飛ばされてしまうのだ。今、陣たちの首にある銀色の首輪によって。
「この首輪は完全防水、対ショック性で、絶対に外すことは出来ません。無理に外そうとしても爆発しますし、この地図の外に逃げようとしても爆発します。それに、地図の中と外の境界には高圧電流を流してある鉄条網は張ってありますから、触れたら感電死は免れないでしょう。見張りもいますしね」
―…それじゃあ逃げ出すこともままならないな…。
「あと、このプログラムで二十四時間以内に一人も死亡しなかった場合は、その時点で生き残っている全員の首輪が爆発します。この場合、時間切れで優勝者はなし、ということになります。ルールについては以上ですが何か、質問はありますか?」
陣は周りを見渡したが、誰も質問をしようとはしなかった。それが分かったらしい福浜は、話を再開した。
「質問は無さそうですね。それではそろそろ外に出発してもらいますが、その前に…作東君、あれを」
「はい」
福浜に指示された作東という兵士が、一旦部屋の外に出ると、すぐにたくさんのデイパックが載ったカートを押しながら入ってきた。
「出発する前に、皆さんにはこのデイパックを渡します。中には水と食料、地図とコンパス、懐中電灯と武器が入っています。スキー旅行のために持ってきた私物を持っていくのも許可します。武器はそれぞれ、違うものが入っていて、アタリもあればハズレもありますが、これはハンデを失くすためなので我慢してください。それと、君たちが今着てる赤い服は、私たちからのプレゼントの防寒具です。外は寒いから凍死されちゃ困りますから。ちゃんと女子には女性兵士に着させましたから安心してください」
―どうもありがとうございますよ、全く。
陣は心の中で悪態をつく。
「それでは、今から最初に出発する人を発表します。最初に出発する人は既にくじで決めてあります。出発順は、最初が男子1番だった場合、次は2分後に女子1番、その2分後に男子2番…という感じです。なお、転校生のシバタチさんはラストの人の5分後に出発します。それでは…」
そして福浜はスーツの懐から封筒を取り出し、それを開けて中を読み、言った。
「女子8番、玉島祥子さん。あなたが最初です。そしてラストは男子8番西大寺陣君です」
―俺が最後か…、5分後に転校生…、早めにここを離れないと…。
陣は一番後ろに座っている仮面の女、シバタチワカ(転校生)の方を見て、思った。
「じゃあ玉島さん、どうぞ」
福浜に呼ばれて、玉島祥子(女子8番)が立ち上がる。陣はその時、祥子が立ち上がる瞬間に同じテーブルの粟倉貴子(女子1番)たちを見たことに気が付いた。
―何か、相談でもしたのか?
そして陣は、貴子の方を見る。
―貴子…それに…。
同じテーブルの、さっきから一言も発しない庄周平(男子10番)と多津美重宏(男子13番)。彼らとの合流も、考えなくてはいけない。信用できるのは貴子と彼らだけだ。
そしてちょうどそこまで考えていた時、玉島祥子が作東という兵士からデイパックを受け取って、ドアから出て行った。
AM1:47、ゲーム開始。
試合開始、終了―
<残り35+1人>