杉琴。の戯言
〜 あとがきと解説 〜
鳴動編
第23話〜迷走の章・8『現実』
『鳴動編』最初の話は『迷走の章』。悠斗と冬子の話からです。
冬子のフォローもあって立ち直りかけていた悠斗ですが、放送で峻と真之の死を知るとまた負の方向へとベクトルが働いてしまっています。
この不安定さが今後悪い影響を及ぼさなければ良いのですが……。
一方の冬子は、なかなかの精神力でまたしても悠斗をフォロー。『良家の子女』らしからぬ強さを持っているようで、期待できそう。
そして放送も終わり移動開始。ここからちょっと、他の生徒たちの放送に対する反応へと視点が移っていきます。
第24話〜『確信』
智美の死体を発見した、隆彦たち不良グループの話です。
現場に落ちていたものから隆彦は智美殺しの犯人にほぼ当たりをつけてしまいました。このあたり、決して喧嘩一辺倒の人物でないと言えるでしょう。
しかしその一方で、古嶋たちを倒すという目的を果たすためのブレーン不在という問題が彼らに圧し掛かってきています。
頭脳面以外では比較的充実しているグループだけに、この点を何とかしたいところなのですが……。
第25話〜『疑問』
やはり仲間のうち二人が既に死亡という情報はきついものがあったのか、ショッピングモール組に重い空気が……。
それを払拭したい康でしたが、そこに現れた悠斗のおかげでどうにか重苦しい空気は振り払われたようです。しかしその一方で、康は冬子が気になる様子。
ここでの康の言葉は、間違ってはいないでしょう。もともと仲間内でモールに集まるはずだったのですし、部外者はあまり歓迎できないのが普通。しかも普段あまり見知った相手でないとなると、容易には受け入れられません。
結局所持品検査を行うことになりましたが、果たして……?
第26話〜『検査』
引き続き、康の視点からショッピングモール組の話です。
悠斗と冬子の所持品検査では、特に不審な点は見つからず。冬子が単独行動をしていた理由も、本人の口から説明されました。
ですがまだ康は気になる点があるようで……。おまけに悠斗の状態がどうにも不安定。悠斗が澄香を殺してしまったことも康たちに説明されていません。
まだまだ、一安心とはいきそうもないショッピングモール組。ここで一旦、他の生徒たちへと視点が移ります。
第27話〜『苛立』
ごく自然にゲームに乗っていた弘樹。
ですが、武器の不足や啓次郎の存在もあって上手く立ち回れず。最後は何者かの銃撃によってあっけなく生命を落としてしまいました。
最後については、啓次郎の挙動に苛立っていたが故の注意力散漫ということもあり得ますし、これが彼の実力だったという可能性も……。
弘樹の抱いていた思いについては、結構内心こういう思いをしている人は多いのではないか、と個人的には思っています。弘樹も心を広く持つことが大事だったでしょうし、啓次郎ももう少し周囲に気を使えれば良かったのかもしれません。
そして弘樹を射殺した人物の正体は……?
第28話〜情念の章・2『感触』
弘樹を殺した人物の正体は、久信でした。
初めて撃った拳銃の弾でいきなり即死させる、というのは非常に難しいと思いますが、今回は偶然にもそれが起きることとなりました。
既にやる気になっている久信は、すぐにもう一人の啓次郎も仕留めます。啓次郎としてはすぐにでも逃げ出すべきだったのですが、それさえできないほどに混乱していた上に、弘樹によって転倒させられていたのが痛かったと言えるでしょう。結局彼は、弘樹の思いについては気づけぬままでした。
さらに、久信のもとへと何者かが接近。果たしてその正体は誰なのでしょうか?
第29話〜情念の章・3『不利』
久信の前に現れたのは、彼と同じくやる気になっていた伊織でした。
実はこの二人の対決、当初のプロットではやらないか、もう少し後に回す予定でした。それがここに挿入された理由は色々あるのですが、少々長くなるので割愛させていただきます。
ともかく、武器の面では完全に不利となった久信。何とか手持ちの武器を活用して窮地を脱しましたが、やはり拳銃一つではまだ厳しいのは事実。
今後彼はどうしていくのか、注目していただきたいと思います。
第30話〜迷走の章・9『混迷』
ショッピングモール組に話を戻し、無事合流を果たした悠斗の話です。
澄香殺害の件もあって、合流後も落ち着くことができないでいるようです。ここにいない直美のことに思考の比重が傾き始めており、彼も不安要素は多いようです。
その一方で、永市に対しては徐々に信頼し始めているようですので、これをきっかけに状態が良くなれば事態は好転しそうですが……。
ともかく、状況は安定したものの良くなってきたとはまだ言えない雰囲気。果たして悠斗はどうするのでしょうか?
第31話〜『離別』
今回が初登場となる、恭子の視点からの話です。
恭子のようなタイプの生徒は今までに書いた記憶がなかったので、正直結構苦戦した話だったりします。しかし同時に、書いていて非常に楽しい話でもあったのでついつい文章が長くなってしまいました。
彼女もまた、智美などのようにイメージゆえにこういう状況では苦しみそうなタイプの生徒なのですが、彼女はどうにか親友と合流できました。
しかしあっという間に別れることとなってしまいました。彼女たちが再会することは叶うのでしょうか?
また、今回奈美江の話の中で伊織の謎の行動が語られましたが……これについては、また今後語られていくと思われます。
第32話〜瞬間の章・3『眼前』
悠斗による澄香殺害を目撃した江里佳。
過去の記憶も重なって、時間の経過と共に確実に精神は摩耗。狂った状態を受け入れるかのようにやる気になってしまいました。
そして早速何者かを手にかけますが、どうやらその相手は決して死んではいないようで……。
生死の確認もできない状態にまで壊れてしまったようですが、果たして今後どうなってしまうのか。そして撃たれた女子生徒の正体は……?
第33話〜反逆の章・1『復活』
今回が初の『反逆の章』。その主人公は、不登校児である蛍です。
不登校ゆえに交友関係、情報共に不足しているのはかなり大きな差なのですが……今のところは、それもあまり心配はないようです。
今回蛍というキャラクターを作るにあたっては、かつて自分の周りにいた不登校の知り合いを参考にしてキャラクターを造形させていただきました。しかし記憶が少し古いせいかちょっと曖昧な気も……。
さて、今回が初登場の蛍ですが、こうして『〜の章』を与えられたからには彼女もまた、キーパーソンの一人となり得る存在です。
彼女の行動が、一体何をもたらすのか……?
第34話〜『孤独』
自分の周囲の友情を疑ってしまい、孤独に怯えることとなった梨恵子。
似たような経験がある人も、いるのではないでしょうか? 少なくとも私は似たような思いをしたことがあります。
一度はなくしていた友人への信頼を取り戻し始めた梨恵子でしたが、今度は逆に信用をしすぎてしまったが故の最期を迎えてしまいました。
そして梨恵子を殺した弓。友人の裏切りをうけて、時間の経過とともに完全にやる気のスイッチが入ってしまいました。武器はやや不安ですが、果たして……?
第35話〜『恋人』
脱出の方法を探している隆彦たちですが、どうにも状況は芳しくありません。
精神的にも疲弊してきていたところでの信頼できるクラスメイトとの遭遇。これは非常に大きいでしょう。動きの多くはない話でしたが、隆彦たちにとっては一歩前進となったはず。
今回が初登場の友宏と百合ですが、彼らは友宏の友人たちを探している様子。しかし彼らは既に……。
本人の知らないところで既に目的が達成不可能になってしまっていますが、果たして彼らの今後は……?
第36話〜『監視』
モール組も徐々に落ち着きを取り戻してきていますが、康はなおも冬子に対して疑念を抱き続けている様子。
冬子への不信感から多くの思考を巡らせていますが、澄香殺害に関してはほぼ真実に辿り着いているあたり、その能力の高さを窺わせます。
しかし一方で、冬子への疑念にこだわり過ぎている感も多少あります。これがどう影響してくるかは、今のところ何とも言えませんが。
そして最後にモールに現れたのは奈美江。康は冬子への監視を強める意味で奈美江との合流を考えているようですが……これに関しては、奈美江次第といって良いでしょう。
モール組の平穏は、まだまだ遠いのかもしれません。
第37話〜深遠の章・3『暗黒』
久しぶりの『深遠の章』です。今回はやや短めな繋ぎの話となっています。
相変わらずあちこちボカシまくりで分かりづらい話になっているかもしれませんが、ご了承くださいませ。
特に今回は、色々と書かなければいけないことや書いてはいけないことが多かったので、かなりの苦戦を強いられました。
そして『彼女』は自分でも何か行動を起こす決意をしたようですが、果たして……?
第38話〜『無為』
普段全く繋がりがないのに合流することとなった道昌と真之介。今回はそんな二人の話です。
道昌というキャラクターの性格はなかなか生みの親の私も掴みにくく、苦戦した話なのですが、後半の道昌の感情に気付いた瞬間ペースがアップして書きやすくなった話でもあります。
僅か1話の登場ではありましたが、作者的にはこの1話だけで道昌は結構印象に残る生徒となってくれました。
そしてその道昌を倒した弓は、ついに銃を手に入れました。これで武器面のハンデもかなり埋まったといえますが果たして……。
また、逃げ延びた真之介は一体どうなるのでしょうか?
第39話〜『勇気』
前回どうにか逃げ延びた真之介の話です。
これまでの孤独ゆえに、プログラム中にできた仲間、道昌にかなり固執しています。迷いながらも意を決し、遭遇した友宏と百合の協力を得て道昌救出に動こうとしましたが……ここで無念の退場です。
人間的にはまずまず出来ていたかもしれませんが、もともとの基本スペックが高くないうえに所持品もなし。ここを生き延びても先は厳しかったのでしょうが、残念な結果となってしまいました。
そして真之介を殺した久信と、それに対峙する友宏と百合。
武装面では友宏も銃を持っているので、久信有利とは一概には言い難い状況ですが、果たして……?
第40話〜情念の章・4『嫉妬』
久信視点からの、久信VS友宏&百合の話です。
しかし戦闘よりは、言葉のぶつけ合いで、おまけに久信が圧倒的優勢のまま終了。書いていて、論戦を書くのは苦手だと感じることになりました。
ですが久信のキャラクターを掘り下げるにあたって、友宏のような人物と言葉を交わすことは大事だと考え、こういう話を盛りこんでいます。おそらく久信の欲しいものを持っている人物でしょうし……。
一方の友宏は探し人である啓次郎と弘樹の死、さらに久信の言葉をうけてかなりダメージを受けてしまったようです。
百合の存在が良い影響をもたらすことに期待したいところです。