BATTLE ROYALE
〜 殺戮遊戯 〜


第15話

―ふふふ、優勝してやる。絶対に!
 於保正己(男子4番)は学校の校庭に戻ってきていた。
 正己は愛国主義者だった。
 父がプログラム担当官をやっているせいか、いつも父にこう言われてきた。
「正己、お前もこの国のためになる事をしろよ」と。
―プログラムもこの国のための立派な戦闘実験。だったら頑張って優勝するしかない!
―とりあえず、出てくる奴を待つか。
 だが、その時出てきたのは、最後の出発となる、瀬田祐美(女子10番)だった。
―何? じゃあ、ここでは1人しか殺せないじゃないか! まあいい!
 正己は折りたたみナイフをしっかりと握り締めて、そっと祐美へと向かっていった。
「きゃあ!」
 しかし、祐美は正己の姿を見ると、すぐに逃げ出してしまった。
―な? 何で見た瞬間逃げ出すんだ?
 そこで正己はあることに気が付いた。
 正己はクラスでもあまり好かれておらず、やる気になる可能性が高いと考えられているはずだ。
 それに、うっかりしてナイフに付いた湯原真弓(女子20番)の血を拭いていなかったのだ。
 それなら祐美がすぐに逃げ出したのも分かる。
―くそ! しかしここももうすぐ禁止エリアになるし、さっきの所へ戻るか。
 正己はまた真弓を殺した場所にとんぼ返りする事になった。
 だが戻る途中、男子らしき人影を見つけた。
―ん? 誰だ? …まあそんなことはどうでもいい。殺せばいいだけのことだ!
 正己はその人影に向かっていった。
 しかし、その人影は正己のナイフをかわすと、その手を捻り上げた。
 ナイフが正己の手から落ち、地面に刺さった。
 その人影は、佐藤康利(男子8番)だった。
「お前が真弓をやったのか…」
「な、何で僕がやったってことになるんだよ、康利?」
 すると、康利は言った。
「お前が持ってたナイフに付いてた血だ!」
「え…」
「正己、ミスしたな。ナイフから滴った血がお前の進んだ道に落ちてたんだ! 許さねえ…ぶっ殺してやる!」
 そう叫んで康利は手に持っていたもの…グロッグ18を正己に向けた。
「これな…フルオートでも撃てるんだよ。どうだ、普通に撃って欲しいか? それとも蜂の巣をご希望ですか?」
 正己は叫んだ。
「わ、悪かったって! 謝るから! 頼む、殺さないでくれよ!」
「…蜂の巣、だな」
「ヒィィィィィィィィッ!」
 康利は正己を突き飛ばすと、正己に向けてグロッグをフルオートで撃った。
 ドガドガドガ
「ギャァァァァァァァァ!」
 正己の体は文字通り、蜂の巣になり、仰向けに倒れた。
 正己の死体に、康利はぺっと唾を吐いた。
 そして、思った。
―こんなゲームがなかったら、真弓は死ななかったのに! 稚下野たちをぶっ殺してやりたい! でも、学校にはもう入れない…。
 そこで康利は考えた。
―こうなったら、優勝してやる。優勝して学校へ戻り、稚下野たちを殺してやる!
「そうだ、そうすればいいんだ。ハハハ…、ハハハハハハハハハ!」
 康利は叫んだ。
 ここに、一人の殺戮者が生まれた。
 癒えない痛みを持った悲しい、とても、悲しい。

 男子4番 於保正己 退場


<残り40人>


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