BATTLE ROYALE
〜 殺戮遊戯 〜


第16話

 スタート地点より少し南のD−8。
 そこに名和年秀(男子17番)は立っていた。
 恋人の瀬田祐美(女子10番)に「D−8で待つ」というメモを渡していた年秀は、ラストに出発する祐美を待っていた。
―俺が祐美を守ってやんねえと…
 年秀はいつもそう思っていた。
 祐美は不良グループに入っているが、はっきりいって不良には見えないくらいに気が弱く、ドジでのろまで幼い女子だった。
 デートをすると、目を離すとすぐに何人かの男に絡まれ(恋人である年秀が言うと過大評価に聞こえるかもしれないが、祐美は実際かわいかった)、そのたびに年秀がそいつらを追っ払っていた。
 そんなように、今回も年秀は祐美を守ってやるつもりだった。
 そう、まるで姫を守る騎士のように。
 やがて、祐美がやって来た。
 しかし、年秀は祐美の様子がおかしい事に気が付いた。
 祐美の顔は恐怖に怯え、冷や汗をかいていた。
「ど、どうした、祐美?」
 年秀が聞くと、やっと年秀に気が付いたらしい祐美は、突然後ずさった。
「祐美?」
 祐美は恐怖に怯えた顔のまま、言った。
「こ、来ないで!みんなやる気になっちゃった…、年秀もやる気かもしれないじゃない!」
 すると祐美は突然西へ走り出した。
「ま、待ってくれ祐美! 俺はやる気じゃない!」
 年秀もすぐに祐美を追いかけた。ひたすら追いかけた。
 だが、D−6でとうとう見失ってしまった。
「何で、何で…なんで俺を信じてくれないんだよ、祐美…」
 年秀は泣きたくなった。涙も自然と溢れてくる。
 しかし、年秀はその涙を何とか止めた。
―何泣いてんだ、俺。祐美を探さないといけないだろ! 俺が祐美を守るんだから。
 そこで年秀はまだ支給武器を確認していないのに気が付き、デイバッグを漁った。
 中からは、ダガーナイフが5本出てきた。
 年秀はそのうちの1本を手に取り、歩き出した。
ー愛する者を、守るために。


<残り40人>


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