BATTLE ROYALE
〜 殺戮遊戯 〜


第29話

「はあっ、はあっ、はあっ…」
 時田賢介(男子16番)は全速力で山を駆け下りていた。
 先ほど吉山孝太(男子21番)を襲った高円寺紀世彦(男子7番)は追ってこないようだ。
「何で、何で殺しあうんだよ…何で!」
 賢介は分からなかった。
 こんなクソみたいなゲームに乗ってしまう奴の気持ちが。
 賢介は信じていた。このクラスが団結して稚下野たちに立ち向かうことを。
 だが最初の放送で、6人も死んでいたし、銃声も何回かしていた。
 しかしそれでも賢介は、クラスメイトを信じようと思った。
 そう考えて呼びかけた結果…孝太が襲われた。
「くそっ、くそっ、くそっ!」
 そこで賢介は、自分が山のふもとの森林(大体F−6辺りだろう)まで逃げて来ていた事に気がついた。
 その時だった。
「死ねっ!」
 そんな声がして振り向くと、名神和代(女子14番)が賢介に向かってサバイバルナイフを振り上げていた。
 和代はすぐにナイフを振り下ろした。
「うわっ!」
 すぐに賢介は反応し、とっさに左の林に飛び込んだ。
 賢介はデイバッグから支給武器のトンファーを取り出した。
 その直後、和代が林に入ってきて、またナイフで襲い掛かってきた。
 賢介はそれを素早くトンファーで受け止めた。
「教えてくれ、名神さん。何で、何で殺しあうんだ?」
 和代はあっさりと答えた。
「何でかって? それは殺しあわなきゃ家に帰れないからに決まってるでしょ?」
「な…そ、そんなの間違ってる! 人を殺して家に帰っても意味なんかない!」
 すると和代は、突然怒ったような口調で言い放った。
「じゃあ何? あんたは死にたいって訳?」
「そうじゃない! 脱出する方法を探せば…」
 その賢介の言葉を遮って、和代が叫んだ。
「そんなの、成功するかどうか分からないでしょ! だったら優勝した方が確実に家に帰れる! 所詮は皆自分が可愛いのよ!」
 そして和代は賢介のトンファーを叩き落し、サバイバルナイフを振り上げた。
 だがその直後、和代が「うっ」とうめいて倒れた。
 賢介が和代に近づいてみると、どうも気絶しただけのようだった。
 そして和代の後ろには、鉄パイプを持った玉田龍ノ介(男子13番)が立っていた。
 賢介はすぐに、龍ノ介についての情報を引きずり出した。
 玉田龍ノ介。今年になって転校してきたので、クラスに親しい人物はいない。
 剣道部所属。前の学校でも剣道部だったらしく、その実力はかなりのものらしい。以上。
―玉田は、どうだろうか? やる気なのだろうか?
 賢介が考えていると、龍ノ介が言った。
「早く行け」
「えっ?」
「お前は殺し合いを止めさせたいんだろ? さっきの呼びかけ、聞いてたぞ」
「あ、ああ」
 賢介は相槌を打った。
「ならここで死ぬわけにはいかないだろ。名神は俺が何とかする。行け」
「分かった」
 賢介はそう言って、走っていった。
「…」
 龍ノ介はその後姿を、見送っていた。


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