BATTLE ROYALE
〜 殺戮遊戯 〜


第39話

―ったく! 一体どうしちゃったの、神野さん!
 武田尋子(女子11番)は走りながら思っていた。
 後ろからは、ショットガンを持った神野優(女子8番)が追いかけてくる。
 尋子は必死で自分についてくる土佐洋美(女子12番)に目をやった。
 尋子と洋美は仲が良かった。
 一緒に入った漫画同好会で、よくお互いの書いた漫画を批評しあった。
 将来、合作で漫画を書いて、プロとしてデビューしようと誓い合った仲だった。
 だが、尋子は思った。
―今ここで洋美といるのは危険かもしれない!
 洋美は、先ほど優が突然襲ってきた際に、左足を負傷していた。
 尋子は更に考えた。
―その洋美を連れて逃げても、きっとただの足手まといにしかならない。
―そうよ、このまま逃げたら私も死ぬ…。
 そして尋子は、最悪の考えに行き着いた。
―洋美を犠牲にして逃げれば、私は助かる!
 そう決めると尋子は、腰に差しておいたブッシュナイフ(これは尋子の支給武器で、洋美の支給武器は、4と5と6しかない変なサイコロだった)を取り出し、洋美の右足に突き立てた。
「痛いっ!」
 洋美はもんどりうって倒れた。
「な、何するの、尋子!」
 尋子はあっさりと言った。
「決まってるでしょ? あなたといたら、私も死ぬかもしれないじゃない。私は死にたくないの」
 そして尋子は走っていった。
 洋美は尋子の後ろ姿を愕然とした顔で見送っていた。
 洋美の目には、涙が浮かんでいた。
 やがて、優が洋美のもとへやってきた。
「やっと見つけた…」
 優がそう言うと、洋美は泣きながら、言った。
「こっ、殺さないで! お願い!」
「それは無理よ。だって私は…紀世彦くんを優勝させるんだもの」
 優がSPASの引き金を引いた。
 どごん、という音と共に、洋美の頭が吹き飛んだ。
―その頃尋子は、洋美を置いてきた場所から少し離れた茂みに隠れた。
―よし。これで神野さんがいなくなったら逃げればいいわ。
 だが突如、ドガドガドガという銃声と共に尋子の背中にいくつもの穴が空いた。
 尋子はうつ伏せに倒れた。
―な、何?
 尋子が何とか立ち上がり、背後を見ると、赤髪の男、佐藤康利(男子8番)がグロッグ18を構え、立っていた。
「…人間のクズだな、お前」
 康利がそう言った。
 尋子は言い返した。
「何よ、あんただって生き残りたいんでしょ? だから人を殺そうとしてるんでしょ? だったら、私もあんたも同じ穴のムジナよ!」
 しばらく、沈黙が続いた。
 やがて、康利が言った。
「俺は生き残る気なんてねえよ」
―え?
 そして、そこで尋子の思考は止まった。
 康利が、グロッグで尋子の全身を撃ち抜き、そのうちの1つの弾丸が、尋子の脳を破壊したので。
 尋子の体が、仰向けにゆっくりと崩れ落ちた。
 康利は言った。
「俺は真弓の仇が取れればそれでいいんだ」
 康利は尋子のもう物言わぬ体に背を向けて、歩き出した。

 女子11番 武田尋子
 女子12番 土佐洋美 退場


<残り28人>


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