BATTLE
ROYALE
〜 殺戮遊戯 〜
第40話
少し遠くで聞こえた銃声を聞きながら、神野優(女子8番)は歩き出していた。
銃声のした方向は、先ほど逃げた武田尋子(女子11番)の走っていった方向だった。
―多分、武田さんは殺されたんだろうな。
そう考えて、優はそれとは逆の、西の方向へ向かう事にした。
「疲れた…」
優の体は、かなり疲れていた。
―やっぱりまだ1度も寝ていないのはまずかったかな?
―休まなきゃ…でも、その間に紀世彦くんが死んだらどうしよう… 早くこのゲームの決着をつけて紀世彦くんを優勝させないと…
このゲームが始まってからずっと、優は紀世彦のことばかり考えていた。
他の友達も大切だ。だが、高円寺紀世彦(男子7番)は優にとって一番大切な人だった。
だから紀世彦のためにもう3人も殺した。
―一体、いつから私は紀世彦くんに恋していたんだろうか。
そして優は紀世彦に恋心を抱いた頃の事を思い出した。
8年前、優が7歳の時の事だった。
誰もいない公園で優が一人遊んでいると、1人の男がやってきた。
そしてその男はいきなり優の手を掴み、何処かへ連れて行こうとした。
優は必死で逃げようとした。
すると優の右目に激痛が走り、優の意識は飛んだ。
次に目が覚めると、優は病院のベッドの上にいた。
そして自分の右目があの男の持っていたナイフによって潰されてしまった事を知った。
その傷を隠すための眼帯をして学校に行った。
教室に入ると、一人の男子が眼帯を無理やり外した。
「うわっ何これ、片目かよ、気持ち悪りぃ!」
そしてクラスのみんなが笑い出した。
その時だった。
「てめえら、それ以上優の事笑うな!」
その頃同じクラスだった紀世彦が叫んだ(倉田凪(女子6番)は別のクラスだった)。
「優が傷ついてるのが分かんねえのかよ! これ以上笑ったら、許さねえぞ!」
紀世彦がそう言ってくれたことが、優は嬉しかった。
さらにその後、紀世彦は優に言った。
「優、元気出せよ。片目でも大丈夫だから! 俺も出来る限り、手助けするからさ」
優は思った。
―ああ、紀世彦くんは私を心から励まそうとしてくれているんだ。優しいな…
そして優は、紀世彦に惹かれていった。
―だからこそ、そんな紀世彦を優は死なせたくなかった。
やがて優は南西の集落、エリアで言うとH−2辺りまで歩いてきていた。
そこで優は、何者かの気配を感じた。
そしてその誰かが、近くの物陰から現れ、優に襲い掛かった。
「うわあああああっ!」
そう叫びながら鉈を振り回す襲撃者の顔を優は鉈を避けながら見た。
河野亮子(女子5番)だった。
―え、何で? 何で、河野さんが?
優は分からなかった。
地味だが、とても女の子らしく、争いごとが嫌いな亮子が人に向かって鉈を振り回している事が。
「シネシネシネシネシネシネ!」
亮子の目は見開かれ、血走り、その目の焦点は合っていなかった。
亮子が狂っているのは、火を見るより明らかだった。
優は鉈を避けながら思った。
―今、私は疲れている。それじゃ勝てないかもしれない。なら…
優はSPASを亮子の足元に向かって撃った。
亮子はひっと呻いて、逃げていった。
「やっぱり休まないと持たないかも…」
優は近くの民家に入った。
<残り28人>