BATTLE
ROYALE
〜 殺戮遊戯 〜
第44話
「殺さなきゃ…殺さなきゃ…」
河野亮子(女子5番)はひたすらそう呟いていた。
彼女は、F−2にある農家の中に隠れていた。
彼女の精神は既に破綻しており、たとえこのゲームで優勝できても壊れた心は元には戻りそうにもなかった。
―もう嫌だ…殺さなきゃ…帰りたい…家に帰って大好きなケーキ作りがしたい!
そう思って先ほど神野優(女子8番)を支給武器の鉈で襲ったが、殺せなかった。
―優ちゃん、ショットガンなんか持ってた! きっとやる気なんだ! やる気に決まってる! きっと…きっときっときっと!
そんな時、突然玄関のドアを叩く音がした。
その次には、場違いに明るい声がした。
「すみませーん、誰かいますかー?」
―誰か来た! きっと私を殺しに来たんだ! 誰だろう? 優ちゃんが仕返しに来たのかな? それとも不良の須磨野さんとか、信行寺さん?
亮子はやる気になりそうな人物として須磨野桜(女子9番)や信行寺道世(女子7番)を挙げていた。
「誰かいませんかー? 誰かいたら仲間にしてくれませんかー?」
―仲間? 嘘だ。きっと騙して私を殺す気なんだ! 騙されちゃいけない!
そして、ドアが開く音がした。
そこには、橋本繁洋(男子18番)が立っていた。
繁洋の右手には、拳銃(これは繁洋の支給武器で、ブローニングハイパワーだったが、亮子がそんな事を知るはずがなかった)があった。
亮子はその拳銃を見てびくっとした。
―きっと橋本君、あの銃で私を撃ち殺すつもりなんだ!
亮子がブローニングを見ているのに気がついたのか、繁洋が言った。
「あっ、安心して。僕はやる気じゃないから。僕は仲間を探してるだけだから。だから河野さん、僕の仲間になってくれない?」
しかし、亮子は繁洋のそんな言葉は聞いていなかった。
―橋本君は銃を持ってる! このままじっとしてたらやられる!
―やらなきゃ、やられる!
「ああああああ!」
亮子は鉈をぐっと握って繁洋に向かっていった。
繁洋は咄嗟に体をよじったが、鉈は左脇腹を掠め、繁洋は尻餅をついた。
「う…っ」
亮子はさらに鉈を振りかぶって繁洋に襲い掛かった。
しかし、繁洋が鉈を掴んだ亮子の手を掴み、自分に当たらないようにした。
そしてその直後、亮子は自分の体が倒れるのを感じた。
その次に首が熱くなるのを感じた。
目の前の繁洋が、呆然とした顔で自分を見ていた。
―え? 何で橋本君、そんな顔してるの? 私はどうなったの? あれ、何か首が痛…い…。
そこで、亮子の意識は途切れた。
繁洋は首に自分の鉈が刺さった亮子を呆然とした顔で見ていた。
女子5番 河野亮子 退場
<残り26人>