BATTLE ROYALE
〜 殺戮遊戯 〜


第45話

「そ、そんな…」
 橋本繁洋(男子18番)はそう呟いた。
 目の前には河野亮子(女子5番)の首に鉈が刺さった死体がある。
 自分のミスだ。繁洋は思った。
 亮子が恐怖で正常な判断を失っていたとすれば、すぐに逃げるとか、対処する方法はあったはずだ。
 しかし繁洋は咄嗟に亮子の腕を掴んで鉈が当たらぬよう、鉈の刃が亮子の方へ向くようねじ上げてしまったのだ。
―僕は殺すつもりなんてなかったのに。何で殺しちゃったんだろう…。
 そして繁洋は、「自分が殺した」、亮子の死体を見た。
 亮子に向かって、手を合わせた。
 これ以外に、自分がすべき事が分からなかったから。
 すぐに繁洋は、農家を出て、北に向かって歩き出した。
 当てなどはない。
 もはや当初の目的だった仲間探しのこともすっかり頭から抜け落ちていた。
 繁洋の頭には、亮子への懺悔の気持ちと、どうすれば亮子に償ってやれるのかしか考えていなかった。
 そうやって歩き続け、D−2の海岸に出た所で、繁洋は人影を発見した。
 佐藤康利(男子8番)だった。
「い…委員長!」
 繁洋は康利に向かって走っていった。
 そして言った。
「ねえ…僕、人を…河野さんを殺しちゃったよ…僕、どうやって河野さんに償えばいいのかな?」
 康利は冷めた目でぼそっと言って、そっと繁洋のブローニングを取った。
「じゃあ…死ねよ」
「え?」
 その次の瞬間には、康利が構えたブローニングから発射された鉛弾が、繁洋の額に穴を開けていた。
「死んで償えばいいだろ」
 康利は仰向けに倒れた繁洋のもう物言わぬ骸に向かってそう呟いて北へ歩いて行った。

 男子18番 橋本繁洋 退場


<残り25人>


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