BATTLE
ROYALE
〜 殺戮遊戯 〜
第52話
「うらぁっ!」
津田公平(男子14番)はボロボロの体でありながら、柳刃包丁を手に、信行寺道世(女子7番)に向かっていった。
突然の公平の攻撃に驚いた道世はイングラムを構えることも出来ずに、後ろに飛び退こうとした。
だが公平は、その道世のイングラムに柳刃包丁を突き立て、抜いた。
「ちいっ、外しちまった」
そう呟き、再び公平は道世に向かっていった。
しかし、さすがに今度ばかりは道世もかわした。
だが、公平も諦めずに、道世に向かっていく。
ところが、公平は突然、しゃがみこんでしまった。
撃たれた傷が痛んだのだろう。
普通なら動けないどころか、死んでもおかしくない傷なのだ、再び立ち上がるのは不可能だろう。
「今度こそ終わりよ、死ね!」
道世が公平に向かってイングラムを構え、撃った。
その時だった。
突然イングラムが爆発したのだ。
おそらく、先ほどの公平の包丁が刺さった事により、イングラムが壊れたのだろう。
そして公平は、爆発で怪我をしたのか、うずくまって動かない道世に膝をつきながら近づき、柳刃包丁を背中に突き立てた。
「うぐ…っ」
道世はもがきながら息絶えた。
そして公平も、うつ伏せに倒れた。
「津田君!」
瀬田祐美(女子10番)が駆け寄った。
公平はゆっくりと、苦しそうに祐美に言った。
「瀬田…早く…逃げろ。生き…ろ。それが、年秀と俺の…望みだ…から…」
「でも…でも…」
「…俺はもう…無理だ。もうすぐ…死ぬのは…分かってる。だから…早く、逃げ、ろ」
最後にそう言うと、公平の目がゆっくりと閉じられ、微かに動いていた手が完全に動かなくなった。
「津田…君?」
祐美は公平に呼びかけた。
だが、もう公平は返事はしなかった。
死んでいた。
「そんな…」
祐美の目から涙が溢れた。
自分を助けようとしてくれたうえ、自分の名和年秀(男子17番)への誤解も解いてくれた公平が死んだ。
そのショックで、祐美は逃げる事を忘れていた。
そして…。
「…激しい戦いだったみたいだな…」
祐美がその声に驚いて振り向くと、そこには佐藤康利(男子8番)が立っていた。
「銃声を聞いてここまで来たけど…もうお前しかいないんだな…」
その康利の言い回しに、何となく祐美は恐怖を覚えた。
そして、康利が言った。
「じゃあ、お前だけでも殺しておくか」
康利の手にあったブローニングの銃口が祐美のほうを向いた。
祐美は思った。
―ゴメンなさい、年秀、津田君。私…、もうこれ以上生き延びれそうにないよ…。
その直後、ブローニングが火を噴き、祐美は胸を撃ち抜かれ、仰向けに倒れた。
そして康利は、武器を探し始めた。
やがて康利の目に、祐美の持っていた探知機が入った。
「これを持っていくか…ん?」
その探知機は、最初の道世の攻撃でイングラムの弾が当たり、壊れていた。
貫通しなかったのはまさに奇跡と言えるだろう。
「ちっ」
康利はそう呟くと、歩いていった。
男子14番 津田公平
女子7番 信行寺道世
女子10番 瀬田祐美 退場
<残り21人>