BATTLE ROYALE
〜 殺戮遊戯 〜


第62話

 曽原秀也(男子10番)は、荷台から飛び降りるとすぐに木の陰に隠れ、絵馬忍(女子3番)に向かってデリンジャーを1発、撃った。
 すると忍は、目標を藤川圭吾(男子20番)たちの乗る軽トラから、秀也に変えてきたらしく、秀也の隠れている木の幹に向かってシュマイザーを乱射してきた。
 忍の狙いは撃ちなれたせいか、かなり正確で、確実に、秀也の身体を捉えようとしていた。
「全く…邪魔をしないでほしいんだけど…」
 忍がそう呟いたのが、秀也には聞こえた。
 秀也は、忍に思い切って疑問をぶつけてみた(無論、隠れたままで)。
「絵馬…何でお前はゲームに乗ったんだ!?」
 秀也のイメージでは、絵馬忍とは、兎丸葵(女子13番)や神野優(女子8番)、倉田凪(女子6番)ら陸上部の女子たちと仲が良く、比較的大人しい感じの女子で、おおよそゲームに乗りそうもない人物だった。
 しかし、そんな忍が、ゲームに乗っていること(秀也は死んだ彦野勝(男子19番)から、忍が和歌野将(男子22番)を殺した事を聞いていたので、忍がゲームに乗った事は知っていた)が、秀也には信じられなかった。
 だからこそ、この疑問をぶつけてみたのである。
 そして、忍は言った。
「ねえ…曽原君は自分がもうすぐ死ぬと分かったとき、自分のことをいろんな人に記憶してほしいって…思う?」
「え? どういう意味だ?」
 秀也は意味が分からず、忍に言った。
「…」
 だが忍はそれには答えず、またシュマイザーを撃ってきた。
 忍の言葉が気になり、少し木の幹からはみ出してしまった秀也の身体に向けて。
 ダダダダダダダ
「ぐうっ!」
 放たれた鉛弾のうちのひとつが、秀也の左脇腹を貫いていた。
「ちいっ!」
 秀也もすぐにデリンジャーで応戦した。
 だが、最初の一発で弾切れとなってしまった。
「し、しまった!」
 自分のデリンジャーは装弾数たったの2発の、銃撃戦には向かない銃だったのを、秀也は今思い出した。
「くそ!」
 このままではいずれ忍のシュマイザーで全身を貫かれるだろう。
―ああ、もう俺…、ダメなのかもな…このまま…死んじまうんだろうな…。
 だが、そこに何者かが秀也の手からデリンジャーを奪い取った。
「え?」
 秀也はその人物の顔を、よく見た。
 それは、玉田龍ノ介(男子13番)だった。
「曽原、この銃の予備の弾は?」
「え、こ、ここにあるけど…」
 秀也がデリンジャーの予備の弾をポケットから抜き取ると、龍ノ介はそれを素早く奪い取り、デリンジャーに込め始めた。
「な、何を…」
「お前は行け。向こうでお前の仲間らしき奴らがお前を待ってたよ。だから早く行け」
「で、でも…」
「行け! 俺はもう、人を死なせたくない!」
「…分かったよ」
 秀也はそう言うと、東へ走り出した。
 それを見送って、龍ノ介は忍に向かって言った。
「さあ、次は俺が相手だ」


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