BATTLE
ROYALE
〜 殺戮遊戯 〜
第66話
時は藤川圭吾(男子20番)たちが佐藤康利(男子8番)に襲撃を受けた頃に遡る。
その頃、C−8のプログラム実施本部のモニタールームでは、兵士たちが圭吾のハッキングにより解除された禁止エリアを回復するのに躍起になっていた。
だが、彼らが禁止エリアを回復する前に圭吾達の乗った軽トラは本部に突っ込んでしまいそうだった。
「くそう! このままじゃプログラムの続行が不可能になっちまう!」
稚下野六郎(埼玉県立北屋中学校3年A組プログラム担当官)は、苛立って壁を拳で殴りつけていた。
「お前ら、一刻も早くシステムを回復させるんだ!」
六郎がそう怒鳴っていた頃、1人の兵士がモニタールームから出て行った。
その兵士―、座頭腰也は、隣の空き部屋に入っていた。
そこには、既に御森泰介や血水ガオルもいた。
腰也は2人に言った。
「どうする? 僕たちの立てていた作戦だと…」
「うん…」
実は御森は、クーデターを起こすタイミングを優勝者が決まった瞬間、六郎が一番気の抜けるときと決めていた。
―本当はもっと早くクーデターを起こすべきなんだけど…、六郎君はなかなか隙を見せないし…。
すると、血水が言った。
「なら、今から始めれば? クーデターを」
「え?」
「だって稚下野は今予期せぬ事態で大慌てだから、隙があるんじゃない?」
「…そうか。それでもいいかもね…。よし、やろう!」
御森が言った。
「まずは『彼』に連絡を入れておくよ。計画は早まった、って」
「…よし!」
3人は御森が連絡を入れるとすぐにモニタールームへ向かった。
3人がモニタールームに入ると、六郎が怒鳴った。
「お前ら、何処行ってたんだよ!」
3人はそれには答えず、アサルトライフルを構えた。
「…な?」
すると他の兵士たちも事態を飲み込んだのか、揃ってアサルトライフルを六郎に向かって構えた。
「…六郎君。僕らはもう君を許しておくわけには行かない。君を殺して、このふざけたゲームを終わらせる」
御森は言い放った。
「…ほーう、でもお前らが俺に勝てるか…な!」
そう言うが早いか、六郎は愛用の銃、Vz61スコーピオンを取り出し、他の兵士に向かって放った。
ダララララ
「ううっ」
兵士たちが弾丸のシャワーを降らされ、次々と生命を失ってゆく。
あっという間にモニタールームにいる生きている者は、六郎、そして御森、腰也、ガオルしかいなかった。
「くそっ!」
腰也がアサルトライフルを六郎に向けて撃った。
パパパパパ
だが六郎は素早く腰也の銃撃を予測し、避けた。
―ハハ。さすが伝説の野球選手、ポン田痴夏梁(ぽんだちげはり)を実の父に持つだけあるね、六郎君。
御森は思った。
だが、3対1ではやはり六郎には不利だった。あっという間に3人は六郎を追い詰めた。
だが、その時だった。
激しい音とともに本部が揺れた(ちなみにその音は神野優(女子8番)が軽トラをSPASで爆破し小畑智(男子3番)と橘蓮(男子12番)を殺害した時のもので、揺れは軽トラが本部近くで爆破されたからなのだが、戦いに集中していた彼らは知るよしもなかった)。
「なっ、何だ?」
そして御森たち3人は驚き、隙を作ってしまった。
「今だ!」
六郎がスコーピオンの引き金を引いた。
ダララララ
3人は弾丸のシャワーを受け、揃って仰向けに倒れた。
「は、ははは…死んで…たまるか…!」
だが、そこで六郎の意識は途絶えた。
頭を撃ち抜かれた六郎の死体を見下ろして、御森は立っていた。
確かに御森は六郎に撃たれたが、御森は腰也や血水と違い、大した傷を負っていなかったのだ。
「ふう…終わった…。後はプログラムを終了させれば…」
すると、突然ヘリの飛んでくる音がした。
そしてその音が聞こえなくなったかと思うと、何人もの兵士がモニタールームに乗り込んできた。
そしてその中の一人を見て、御森は言った。
「や…山煮くん…?」
その兵士は、御森の友人の山煮(やまに)だった。
実は御森は、作戦の計画に当たって、山煮に極秘で援護を頼んでおいたのだった。
山煮が言った。
「…遅かったようだな」
「うん…でも、僕らは勝った! だから事前に言っておいたように、このゲームを止めよう!」
だが、山煮は言った。
「無理なんだ」
「…え? 何でさ?」
「教育長がこのプログラムの視察に来る事になったんだ。だからここで止めると…まずいことになる」
「そ…そんな…。じゃあ、もう止めることは出来ないって言うの…?」
「…そうだ」
山煮がそう答えると、御森はがくっと膝をつき、しばらく動かなかった。
<残り15人>