BATTLE
ROYALE
〜 殺戮遊戯 〜
第68話
午前4時45分。
あと15分で禁止エリアになる(藤川圭吾(男子20番)らが解除した禁止エリアは既に山煮や御森たちによって復旧されていたが、それは誰も知る由はない)エリアD?5に、厚木好雄(男子1番)、木田治(男子5番)、須磨野桜(女子9番)は未だに残っていた。
3人は出発前に桜が「D?7で」という紙を好雄と治にも回してきた。
そしてD?7で合流した3人は、D?5まで移動し、そこでじっとしていた。
数々の銃声も、時に聞こえてきた爆発音も、3人は気にしていなかった。
バスケ部エースで無口で、おまけにかなり悲観的な好雄、喧嘩が強く、不良少年だったが決して曽原秀也(男子10番)らのグループとはつるまない「孤高の不良」として知られていた治、そしてクラスの女子不良グループを掌握していた桜(と言っても、本人にグループを掌握している気はなかったようだが)。
彼らは、永遠の友情を誓っていた。
そんな時、好雄が口を開いた。
「…何だか、施設でのことを思い出すな。小さい頃、よく3人でこうやって円を作って座ってたよな」
「ああ…」
治は頷いた。
3人の関係は、施設で始まった。
母親に虐待を受けて心に傷を負い、施設にやって来た好雄と、両親が事故死して引き取られた治と、反政府活動をしていた両親が揃って政府に捕まり強制キャンプに送られて引き取られた桜。
それぞれがそれぞれの心の傷を持っていた3人は、自然と仲が良くなっていた。
特に治と桜は、中2の頃には、自然と恋人同士となっていた。
それでも、3人の友情は変わらなかった。
「もう、4時50分だ」
好雄が言った。
「そう…もうすぐ、終わるのね」
「そうだ…終われるんだ」
3人とも、死後の世界を信じていた。
だから合流した時、全員一致で心中する事が決まった。
こんな最悪の世界から離れて、死後の世界で3人で平和に静かに暮らすために。
だが、それぞれの支給武器は、好雄がペーパークラフト、治はコーラの空き缶、桜はペアリングと到底心中には使えないものばかりだった。
だから、禁止エリアにわざと残って死のうと考えた。
もちろん、D?5が禁止エリアにならなかったらそんな事は出来なくなるのだが、幸いにもD?5が禁止エリアになった。
そしてそのまま、ひたすら時を待ち続けて現在に至る。
「ねえ」
桜が治に向かって言った。
「何だ?」
「これ…はめてくれない?」
桜は治に、ペアリングの片方を差し出した。
桜の左手の薬指にも、もう1つのペアリングがはめられていた。
「…永遠に、死後の世界でも、お互い愛し合う事を誓って?」
「分かった」
治はリングを左手の薬指にはめた。
―…まただ…、何故言えないんだ俺は…! やっぱり…今この3人の関係を壊す事を恐れてるのか…?
治は悩んでいた。
自分が知っている自分と桜の秘密を、好雄と桜に話すかどうかを。
そう、この事実を知られたら自分と桜が引き離されかねなかったから今まで言わなかった、とんでもない秘密を。
<残り15人>