BATTLE ROYALE
〜 殺戮遊戯 〜


第69話

 木田治(男子5番)が知る、自分と須磨野桜(女子9番)についての秘密。
 その内容を知ったのは、ほんの1ヶ月ほど前のことだった。
 その日、治はいつもより早く施設に帰った。
 厚木好雄(男子1番)はバスケの練習、桜は信行寺道世(女子7番)に頼まれて他の不良グループとの喧嘩に行っていた。
 そんな時、職員室で施設の館長である山村館長が他の職員と話しているのが聞こえた。
 山村館長が言った。
「そう、治君と桜ちゃんが交際を…、いけないわね…」
―え? どういうことだよ?
 治は思った。少なくとも山村館長は施設の子供同士の交際などを禁止するような歪んだ人間ではなかったはずだ。
―何で…。
 すると、職員の一人が言った。
「やっぱり、兄妹同士の交際は…まずいですよね、館長」
―兄妹!?
―キョウダイ? キョウダイ? オレトサクラガキョウダイ?
「ど、どういうことですか、館長!」
 いてもたってもいられなくなった治は、職員室に乗り込んだ。
「お、治君…」
「館長、俺と…俺と桜が兄妹ってどういうことですか!」
 そして、山村館長は話してくれた。
 桜の家には子供が出来なかったため、桜の父親の先輩である治の父親に頼み込んで生まれて1年も経たなかった治の双子の妹である桜を養子として貰い受けたという事。
 だが治の両親は交通事故で死に桜の両親は強制キャンプに送られたため、揃ってこの施設に引き取られたという事。
 そしてすぐに仲良くなった2人を見て、兄妹だと伝える事はお互いの今の関係を壊しかねないと思い、あえて言わなかったという事。
 しかし2人が交際を始めたため、兄妹同士の交際はまずいと思い、何とかして引き離そうと考えていた事。
 話し終わってから、山村館長は言った。
「納得いかないのは分かるわ。でも、兄妹同士の交際なんて世間は認めてくれないの! だから、分かって…」
「分かってないのは館長の方じゃないですか! 俺と桜は本気で愛し合ってるんだ、それを兄妹同士だからって引き離すなんてこと…許されるはずがない!」
 それを聞いて、館長は黙ってしまった。
「このことは…いつか機会を見て、俺が話します。館長たちは俺と桜の事には口出ししないで下さい」

 そこで治は現実に戻った。
「…4時58分だ」
 好雄が呟いた。
「もうすぐ、行けるんだね。私たちが信じつづけてきた世界に」
 治は、そう言う桜の横顔をじっと見ていた。
「…どうしたの? 治」
「…いや、何でもない」
 3人を沈黙が包んだ。
 すると、好雄が切り出した。
「最後、3人で手を繋がないか? 俺たちの、永遠の友情の証として」
「ああ…」
 そして3人は手を繋いだ。
「4時59分」
 好雄が呟いた。
 治は思った。
 ―好雄。俺らは、永遠に親友だからな。
 ―桜。俺はお前が妹だろうとずっと愛し続ける。約束だ。
 そして時計が5時を指し、D?5は禁止エリアとなった。
 3人の首が一斉に吹き飛び、仰向けに崩れ落ちた。
 だが3人の手は決して離れてはいなかったし、治と桜の左手の薬指に光るリングに、血飛沫は全く飛んでいなかった。

 男子1番 厚木好雄
 男子5番 木田治
 女子9番 須磨野桜 退場


<残り12人>


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