BATTLE
ROYALE
〜 殺戮遊戯 〜
第71話
ふいに何かもの悲しいメロディが流れ始め、それを目覚まし代わりにD?7で高円寺紀世彦(男子7番)は深い眠りから目覚めた。
「どうも…、担当官の稚下野君はある事情でプログラムの運営不能になったので、ここからは僕、御森泰介が担当官代理を務めます」
そんな声を聞いて、初めて紀世彦は放送の時間になったのだと理解した。
「まずは、これまでに死んだ人たちを発表します。男子13番、玉田龍ノ介。男子10番、曽原秀也。男子3番、小畑智。男子12番、橘蓮。男子1番、厚木好雄。男子5番、木田治。女子9番、須磨野桜。以上7名」
紀世彦はなんの躊躇いもなく、名簿の玉田龍ノ介(男子13番)と曽原秀也(男子10番)の名を赤ペンで消していった。
だが、小畑智(男子3番)と橘蓮(男子12番)のところではやや名を消すのを躊躇った。
2人は紀世彦にとって親友だった。いつも一緒に学校でバカ話をして、よく遊んだ。
2人は一緒にいて、そして誰かに殺されたのだろうか。
そこで紀世彦はもう一人の親友、藤川圭吾(男子20番)がまだ生きている事に気付いた。
圭吾だけ別行動をとっていたのだろうか? それとも…。
だがすぐに紀世彦は彼らについての考えを記憶の奥底に追いやった。
もはや今の紀世彦にとって彼らが何故死に、何故圭吾だけが生きているかなどどうでもよかったのだ。
そして紀世彦は智と蓮の名を消し、続いて厚木好雄(男子1番)、木田治(男子5番)、須磨野桜(女子9番)の名も消した。
まだ放送は続いていた。
「続いて、禁止エリアの発表です。7時から、E?6。9時から、I?1。11時から、J?9。以上です。それでは、放送を終わります…」
放送が終わってからも、紀世彦は考えていた。
―奴はまだ生きているのだろうか?
倉田凪(女子6番)を殺した許し難い奴。そいつはまだこの島に生きているのだろうか?
紀世彦の頭の中を、ひたすら想像上の凪が死んだ瞬間が廻る。
凪を撃ち殺した人物。その顔をひたすら他の生徒の顔に変わる。
だが、その顔は最後まで圭吾と、紀世彦のもう一人の幼馴染である神野優(女子8番)に変わる事はなかった。
その辺り、まだ紀世彦は他人を信じる事が出来ていたのかもしれない。
―少なくとも圭吾と優はやってないはず。
そう、信じていた。
すると突然、背後の茂みから物音がした。
―凪を殺した奴か?
紀世彦は傍らに置いていた日本刀を鞘から抜き、物音のした方に構えた。
そして茂みから出てきた人物を見て、紀世彦は驚いた。
「…優…」
そこにいたのは、右手に何やら銃のような物を持ち、右目に眼帯をつけた女子生徒。
その眼帯に、紀世彦は見覚えがあった。
そこには、紀世彦が信じていた幼馴染、神野優がいた。
「紀世彦…君?」
2人はしばし見つめあっていた。
だが紀世彦はさっきから気になっていた。
―何だ? この…優の服についた…赤いシミは?
2人はまだ気付いていない。
2人は出会うべきではなかった事に。
<残り12人>