BATTLE ROYALE
〜 殺戮遊戯 〜


第73話

「残り…12人…」
 絵馬忍(女子3番)はDー9を走っていた。
 ついさっきからの雨で、忍はしばらくいたDー10を離れ、ちょうどいい民家を探す事にした。
 本来なら別に雨程度で民家を探す必要はない。
 しかし、忍の体力はもうあとどれだけもつか微妙なところまで消耗していた。
 さらに雨に降られては、余計に体力を消耗する。
 残り少ない自分の命は、大切にしなければ優勝は成し遂げる事は出来ない。
 それを忍は十分分かっていた。だからこそ、今雨に打たれることは避けなくてはならなかった。
 やがて忍はEー9にある、商店街にやってきていた。
 商店街には、小さな島には似つかわしくない(こんな事を考えては島の人に失礼だが)立派なアーケードがあり、十分に雨はしのげそうだった。
 そして忍が商店街を歩いていると、雑貨屋の前に人影が見えた。
―ゲームに乗った人?
 思わず、忍は物陰に隠れた。
 その人影は、何やら拳銃のようなものを持った、ショートカットの女子だった。
 忍にはそれが誰なのか、一発で分かった。
 いつも忍たちが何かの問題にぶつかった時には的確なアドバイスをしてくれた友人の一人でよき相談相手、阿佐田仁美(女子1番)だった。
 すると仁美の背後の雑貨屋からまた、忍がよく知っている生徒が現れた。
 外巻きのショートカットに縁無しの眼鏡。
 小山田智絵(女子4番)だった。
 仁美と智絵は、二言三言言葉を交わしたあと、入れ替わりに雑貨屋に入っていった。
 仁美の持っていた銃はどうも智絵に渡されたようだ。
 忍は考えた。
―仁美と智絵がいるって事は、他にも葵や優もいるかもしれないわね。
 忍は雑貨屋に仁美、智絵、そして兎丸葵(女子13番)と神野優(女子8番)がいると予想した(実際、優はここにはいなかったが、それを忍は知らない)。
 さらに忍は、あることを思いついた。
―まずは、仲間に入れてもらう。そして体を少しでも休める。そして頃合を見計らって抜け出す。こうすれば少なくとも親友を殺して嫌な気分にはならなくて済む! ほかにゲームに乗っている人もいるみたいだし、これが一番いいはず。
 そして忍は雑貨屋の前にいる智絵に近づく事にした。
―あっ、人を殺した事がばれないように…。
 忍は私物のスポーツバッグにルガーとシュマイザーを隠し、さらには返り血を隠すために制服を修学旅行のために持ってきていたTシャツとホットパンツ(かなり流行遅れのような気もしたが、これぐらいしか涼しげなズボンが家になかったからしょうがない)に着替え、制服を他の店の中に捨てた。
―これでよし。
 そして忍は智絵に話し掛けた。
「ち、智絵?」
 その声を聞いて、智絵は忍の方を向いた。
「し、忍!?」
「良かった、ここにいたんだ!」
「手紙を葵が回したのに来ないから、心配してたんだよ?」
「ごめんね、でも怖くて…手紙、確認できなかったんだ…」
「ところで忍、武器って…そのけん玉?」
「そう。笑っちゃうよね」
 そう言って忍は右手に持っていたけん玉を智絵に見せた(和歌野将(男子22番)と旗井卑弥呼(女子18番)を殺した時の血はもう取ってあった)。
「智絵のそれは?」
 忍は智絵の持っている銃について聞いてみた。
「これ? これは仁美の支給武器でね、スミスアンドウエッソンM659って言う銃らしいの。説明書には反動が強いって書いてあったんだけど、持ってないよりはマシかなって思ってね。…あっ、話しすぎたね。まあ、中入って」
「ありがとう」
 智絵は忍の荷物チェックなどもせず、忍を店内に入れた。
―ごめんね、智絵。しばらく休息に利用させてもらうね。


<残り12人>


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