BATTLE
ROYALE
〜 殺戮遊戯 〜
第82話
「このへんでいいだろ…」
高円寺紀世彦、神野優、時田賢介、野村葉月の4人はG−5にある寺院までやってきていた。
「まあ、取り敢えずは中に入ろうぜ」
賢介が言った。
そして4人は寺院の中に入った。
「俺は見張りに出ることにするよ」
「おう、頼む」
紀世彦は、そう言って外に出た。
「ふう…」
紀世彦は石段に座り込み、溜息を吐いた。
―ハッキングを、時田は成功させられるだろうか…? 失敗したら、政府の奴らに首輪をぶっ飛ばされるかもな…。
「…紀世彦君」
その声を聞き、紀世彦が振り向くと、優が立っていた。
「よいしょっ…と」
優は紀世彦の隣に座り込んだ。
「優…どうしたんだ?」
「…武器さ、その日本刀だけじゃ心許ないじゃない? だから…これも持ってて」
優はそう言うと、絵馬忍(女子3番)が持っていたシュマイザーを紀世彦に手渡した。
「おう…サンキュ」
優はそれを見上げると、言った。
「紀世彦君って…好きな人いる?」
「え? 何唐突にそんなこと言ってんだよ」
「ちょっとだけ…気になったから」
優はそう言うと、微笑んだ。その時の優の表情はとても大人びていて、綺麗だった。
「…そうか…俺は…うん、いるな、いる」
「…誰なの?」
「…言えないな」
紀世彦は、軽くそう言った。
「そう、ならいいか」
優はあっさりとそう言うと、立ち上がって寺院へ戻っていった。
「うーん…」
賢介はパソコンを睨みつけながら、作業をしていた。
―結構難しいな…。親父なら、あっさり成功してるんだろうな…。
「時田君、どう?」
横に座っている葉月が聞いてくる。
「何とか、出来ると思う…けど…時間がかかるかな…?」
「じゃあ、今生き残っている5人とも、生きて帰れるの?」
「まあ…、まずは委員長を説得しないと話にならないけどな」
そこに、優が戻ってきた。
「紀世彦君に、マシンガン渡してきた」
「そうか…、ん?」
賢介はあることに気付いた。
「ちょっと、見てくれ!」
「どうしたの?」
優と葉月がパソコンの画面を覗き込む。
「藤川の奴…、ハッキングをしたときの記録を残していたんだ。これを使えば、もっと早くハッキングが出来るかもしれない!」
優と葉月も、喜んでいた。
「じゃあ、成功しそうだってことを紀世彦君に伝えてくる!」
そう言って優が立ち上がり、外に出ようとしたときだった。
ドガドガドガ
聞き慣れた連続した銃声と共に古くなった寺院の木の壁に何個か穴が開き、それと同時に葉月の体に数発の銃弾が撃ち込まれ、葉月は仰向けに倒れた。
「は、葉月さん!」
賢介は葉月に駆け寄った。
まだ死んではいないようだったが、かなりの重傷だった。
すると再び連続した銃声がし、パソコンが破壊され、賢介の体も数発の銃弾に貫かれた。
「うがあっ!」
賢介は横向きに倒れた。
「と、時田君!」
優が賢介に駆け寄ろうとした。
「来るな、神野さん! 神野さんも撃たれる! それより早く高円寺と逃げるんだ!」
「う、うん…分かった」
優はすぐに外に出て行った。
―寺の裏から来るとは…、まさか高円寺が見張ってるのに気が付いていたのか?
賢介は考えた。
―クソ。俺…、死ぬのかな…。
また銃声がし、再び数発の銃弾が葉月の胸を貫き、葉月の命を完全に絶った。
―葉月さん…、ゴメン。俺、誰も守れなかった。
―孝太…、ゴメン。俺、生きれなかった…。
―親父。俺、親父より先に死ぬ。ゴメン。
―裕司。俺、カッコ悪い兄貴だった。誇れる兄貴じゃなかった。…ゴメン。
―このクラスのみんな。ゴメン。何謝ってんのかも分かんなくなってきたけど、謝んなきゃいけないような気がするんだ。ゴメン。
―ゴメンナサイ。
そこで賢介の思考は止まった。
1発の銃弾が、賢介の頭部を撃ち抜いていた。
寺院の近くまで来た佐藤康利(男子8番)は、2人が死んだのを確認すると、紀世彦と優を探して、歩き始めた。
男子16番 時田賢介
女子16番 野村葉月 退場
<残り3人>