BATTLE
ROYALE
〜 終わりに続く階段 〜
第14話
中宮町には二つの小さい田舎駅が北東と南西にあり、A-2すなわち北東にそのうちのひとつがある。
この駅は建てられてからあまり時間は経ってなく、青い三角形の屋根は禿げという言葉を知らないかのように綺麗だった。
その線路の周囲にはまっすぐに伸びた生命力を帯びた草むらに混じり、可憐なオキザリス・グラブラのピンクが点々と生えていて、
それはどこか味わいを持ち、魅了させられる何かを持っていた。
「ふぅ」
三咲優(女子3番)は小さく息を吐くと、ホームにあった適当なベンチに座り込み、持参の旅行用バックから大東亜ではポピュラなお菓子、アーモンドチョコを取り出しその封を開けた。
それを開けるとチョコのいい匂いが袋からあふれ出し、優の食欲を刺激した。
徐にそのひとつを口の中に放り込む。
アーモンドを噛締めるたびにチョコの甘苦い味が口いっぱいに広がり今までの疲れと苦労を和らげる。
優自身テニス部所属だが、基礎体力は人並み以下だし、舗装されていない獣道を歩き回るのはかなり体力が削られた。
今はかなり和らいだが、先ほどまで肩で息をしていたものだ。
改めてテニス部に入っていて助かったと思う。
思えばここまでテニス部を続けられたのも部長であった七姫君のお陰かもしれない。
元から病弱な私は何度か練習についていけない時期があった。
そんな私を何度も七姫君は励ましてくれた。
いつも部員からは「お前は部長に向いてない」とたびたびいわれているが、それは大きな勘違いだと思う。
彼は誰にも持ってない優しさと純粋さを持っていた。
テニス部ではたいした成績は残せなかったけど私にとって大きな青春だった。
「ん?」
優はふいに耳を傾けた。
どこからかカツンカツンと革靴の硬い音がしたからだ。
人だ…
自然にベンチに置いてあった柳刃包丁を持ち、それを強く握り締めた。
「あれ、ゆうちんじゃないの」
改札口から柔らかい声が届いた、
そしてその声の持ち主は改札口を強引に通り、スキップ歩調でこちらまで歩み寄ってきた。
「久しぶりだね、ゆうちん」
「七姫君…」
残り4名