BATTLE
ROYALE
〜 終わりに続く階段 〜
第15話
「七姫君・・・」
そういうと彼はにっこりと笑った。
それはいつも学校で見せた笑顔とさほど、いやほとんど変わらなかった。
学校指定の着崩れたブレザーが血まみれという以外は…
「ゆうちんごめんね…これは仕方ないんだよ。だから死んで」
その無邪気な笑顔を崩さず、右腰からゆっくりとファイトセブンを抜き出し、銃口を向けた瞬間、彼の表情が砂の城のように崩れた。
どこか悲しそうな表情に。
どこか寂しそうな表情に。
今にも泣きそうな表情に。
「ゆうちんは俺が怖くないのか?」
「えっ?」
「俺は怖いんだ…今更だけど本当に怖いんだ、この引き金を引くのが… もしも引いたら大きく何かが崩れそうで」
ファイトセブンの底の見えない銃口を向けながら、七姫は見たこともないような暗い表情を見せた。
「俺さぁ…母さんが病気でさぁ、母さんのこと守らなきゃいけないんだ。
俺が死んだら、母さんを守ることすら出来ない。
弟だって俺が死んだら、誰が守る。
そのために俺はこのゲームに乗った。
自分の家族を守るために、大切なクラスメイトまで殺した
地獄に落ちるのは一人。
そう地獄に落ちるのは俺だけでいい。
それでも家族を守りたかった」
淡々とそう話す七姫の目頭から一筋の涙がキラリと落ちた。
それは落ちると儚く宙で弾けた。
「七姫君…もうやめよう。こんなの。こんなの何の利益も得ない…つらいだけだよ」
昔見た絵本で命がテーマのものを見たことがある。
死んだものは二度と戻らない。
生きているなら精一杯生きろといったものだ。
最初読んだときは絵本にしては非常に難解なテーマだったため意味の欠片も分からなかったが、ある日偶然部屋の整理をしているときにその埃被った本を見つけそれを読んだとき、涙がとめどなく溢れた。
小さい生き物が全力で生と死に向き合う姿が縦10センチ横20センチの空間でクレパス調の絵で描かれていた。
死というのは絶対、避けられないものだが奪うものではない。
「…うん」
少し沈黙すると七姫はファイトセブンの標準を外し、袖で零れ落ちる涙を拭った。
「私ね、お母さんがいないの」
涙を拭いながら、七姫は驚愕の反応を見せた。
見たこともないもの新種の何かを見つめる目で。
「私が生まれてすぐお母さんは死んだの。
死因は交通事故…
お母さんがいない分お父さんは私に精一杯の愛情を注いでくれた。
でも、私はお母さんがいない家庭に少し不満だった。
幼稚園のころなんてお母さんがいないというコンプレックスからしょっちゅう泣いていた」
「ゆうちん…」
「だから…」
えっ?
次の言葉を吐き出す前に胸部から激しい痛みが襲い五臓六腑に鉛球がめり込んだ。
そのままホームから線路へと派手に倒れこみ、口いっぱいに鉄の味が広がった。
残り4名