BATTLE
ROYALE
〜 終わりに続く階段 〜
第16話
その光景がスローモーションに見えた。
マズルフラッシュが花火のように鋭い光を放ちどもった連射音が田舎駅一杯に響くと、ゆうちんの胸部から血飛沫が爆ぜた。
えっ?
反射的に銃口を光の発信源へと向けた。
ピントのズレた大振りの眼鏡、ワックスをつけていない短くも長くもない髪、青ざめた真面目そうな顔立ち、間違えるはずもないてっぺーだ!
だがそれ以上追求する暇はなく、アサルトライフルがこちらを見下す形で突発的に口火を吹いた。
突然の発砲に戸惑ったが、それは的外れなもので結果として、ねずみ色のコンクリートに深くねじ込まれるだけだった。
「くそっ」
焦った楠はアサルトライフルの弾を装着しようとした。
だがそうはさせない。
七姫は階段を二段走りの要領で走り、そこまでたどり着くと思いっきり楠に肩でタックルした。
「うぎゃあああ」
楠はだらしない声をあげ、無論そこでバランスを崩し、弾がこもっていないアサルトライフルをガシャンと落とした。
しかし楠の反応は思った以上に早く、仰向けの体を早急に立ち上げると、がら空きの腹部を思いっきり殴りつけた。
それは本当にあのガリ勉委員長のパンチかと思うほど痛く、一二歩猫背の姿勢でよろめいた。
「てっぺー」
震えた声でその名前の持ち主を睨んだ。
「七姫…お前知っているか?」
「何をだ」
「負け組の末路ってやつだよ」
七姫は再び銃口を向けた。
「どういう意味だ」
「おれのおじさん、自己破産して俺の家におしかけてきたんだよ」
そのまま続けた。
「助けてくれ助けてくれと必死で親父に助けを求めたよ。
そうしたら親父はどうしたと思う。
そのおじさんを蹴り飛ばしたよ。
何度も何度も負け犬負け犬とあざ笑いながら。
そこで分かったよ負け組なんてなりたくない。
だから生き残る。負け組にならないため。おじさんみたくならないために俺は生き残る!」
楠は声を荒げると、再びこちらへの打撃を試みた。
だが先ほどに比べるとキレのないパンチはあっけなく交わされ、だらしなく空を切った。
そこを逃さず七姫は階段を足早に下りると、下から3段上から15段付近でファイトセブンを楠に向けそれを発砲した。
それは見事肩部に直撃して、そのまま崩れ落ちた。
七姫は階段をゆっくりと上ると、目の前で崩れた楠に威圧的に言い聞かせた。
「まだ傷は浅い。今すぐここから消えろ。そうすれば見逃すよ」
倒れた楠は気力の抜けた表情のまま無言になっていた。
「もう一度言う。いますぐに」
「いい…もういい」
楠は肩を抑えながらゆっくりと起きて、七姫の持っている銃を指差した。
「それで俺を殺してくれ…」
残り4名