BATTLE
ROYALE
〜 終わりに続く階段 〜
第19話
私は高鳴る鼓動を抑えられないまま吸い込まれるように石畳の階段をスローテンポで上っていった。
大丈夫かなぁ大丈夫かなぁ
無意識に皺をブレザーの裾を握った。
その気持ちと比例し色白のはずの頬は真っ赤になっていた。
気がつけばもう屋上までたどり着いた。
細い腕でゆっくりと錆びがこびりついた重層なドアノブを引く。
ドアを開けると爽やかな3時半のそよ風が通り抜けた。
その風に繊細なロングが曲線を描くように踊った。
錆が入ったフェンスが風にしなり、アスファルトの足元、穏やかな北風にのりゆっくりと動く校章にもなっている風見鶏が写った。
「あっ」
前を向くと七姫君が屈折ない笑顔をこちらに向けていた。
「えぇっと何のようかな」
私は大根役者顔負けの白々しい口調でうっすら苦笑いを浮かべた。
「ごめん」
先程までの笑顔とは一変し七姫君は急に暗い表情になった。
「今までありがとう本当にゆうちんといて楽しかった。
すげぇ楽しかった大好きだ。すげぇ大好きだ」
七姫は涙声になっていたがそのまま続けた。
「だからもう会えないと思うとマジで悲しい。辛すぎてどうすればいいのか分からない」
ふいに生暖かい唾液をごくりと飲んだ何故かとてつもなく喜怒哀楽における哀の感情が湯水のように湧きあがってきたからだ。
刹那コンクリートの床に大きく亀裂が入った。
現実とは思えないその光景に思わず小さくヒッと声をあげた。
えっ何!? 何!?
明らかに動揺している自分とは反比例し、七姫は微動だにせずこちらを吸い込むように凝視していた。
とうとう足場を崩しその場で倒れこんだ。
少し膝元にスリ傷が出来てしまったが危機的状況のせいかたいしてそこは気にならなかった。
やがて嵐の如く揺れは収まったが精神的ダメージは大きくしばしの間直立不動のまま固まっていた。
「大丈夫?」
「あ、うん」
「何でこんなおかしいことが起きているか解る?」
「えっ、もしかして…これは」
「そう夢の世界」
「やっぱりここは夢なんだね」
七姫はあいも相変わらず寂しげな表情を浮かべていた。
「俺の昔の話聞いてくれない?」
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