BATTLE ROYALE
終わりに続く階段


第20話

 東京とはいえその外れにある辺鄙な街の一角なだけであってB-3の集落は鮮やかなネオンがひしめく東京のイメージとは程遠い。
 むしろ大東亜の長年の知恵と文化によって築かれた昔ながらの家が立ち並んでいた。
 周辺には田んぼも数箇所あり、退治する人間がいないせいか青虫やバッタが我が物顔で作物を食い荒らしていた。

 地面もここいったいはコンクリートなど贅沢なものもなく、土粘土のような足場は歩くとねちゃねちゃと不快な感触がする。
 それに追い討ちをするかのように空を覆う厚い雲から鉄砲玉のような大粒の雨が降り出した。
 足場を考えると最悪だろう。

「あ、雨…」

 
椎名未来(女子二番)は上を見上げると即座に屋根裏に逃げ出した。
 だが当分やまないと思われ、失礼ながらその家におじゃますることになった。
 外見同様内見も質素でリビングからは生活感がほとんどなかった。
 ただテーブルが置いてある、ただ椅子が置いてある、ただテレビが置いてある。
 まさしくそんな感じだった。

 ザザッ

 乱れたスピーカー音が近くも遠くもないところから響いた。
 定時放送だろう。

「こんにちは、雨が降ってきましたが大丈夫でしょうか。風邪をひかないよう気をつけてください。さもないと殺し合いに影響が出ますからね」

 なんて他人行儀な放送だろうか。
 少しいらついたがこらえた。
 ここで暴れたからとはいえプログラムが終わるわけでもなく、むしろ無駄に疲れるだけだ。

「先ほどと同じく6時間以内に死んだ生徒を…とはいえ一人ですがね。男子一番楠哲平君。少しお疲れ気味でしょうか?」

「では禁止エリアのほうを1時からA‐2、3時からC‐5以上、今回は少人数ですから次の放送には優勝者が決まっているかと楽しみにしています。では」

 思わずゾッとした。
 あと6時間には優勝者が決まっているかもしれない…
 その言葉の不安と憂鬱感に耐えられず思いっきり机を叩きつける形で殴った。
 拳から神経に流れる痛さとかそんなの関係なかった。
 ただ怖くなった。

 見えない階段にだって終わりはある。
 その終わりが徐々にあと6時間後に見えてしまうかもしれない。
 自分が屍の上にたって生き残れるというのか?
 恐らく無理だろう、強がっているだけの自分にこの状況がどうあれ人一人を殺せることすらまず出来ないだろう。
 もしも自分が殺せて生き残ったところでまともにそんな人間が社会復帰が出来るはずもない。
 人生のドン底を味わいながら精神をすり減らす日々を送らなければならないだろう。

 俊哉ならどうするんだろう。
 ふいに今は亡き幼馴染の顔が浮かんだ。
 シャボン玉のように現れては消え現れては消えそれを繰り返しているうちに涙がジワリとあふれ出てきた。

 もう泣かないと決めたのにダサイな私…

 しばし味気なき机に涙でぐっしょりな顔をうずめていた。
 怖くて悔しくて悲しくて。

 残り3人


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