BATTLE ROYALE
終わりに続く階段


第21話

『ごめんね怜二…
私、皆を友達を殺しすぎた…最初は何としても生きたかったんだ…
でも私もう耐えられない…
だからあなただけは生きて。私の一番大好きな怜二…』

 遠峯玲二(担当教官)は強い頭痛に顔を歪ませた。
 先ほどの放送からあの言葉がずっと深く脳裏に刺さり離れないのだ。

 本来自分は生き残ってはいけない人間のはずだ。
 でも死にたくない死にたくない。

 あの日のプログラム。
 友人たちの無残な姿、沙耶の自殺、そして生き残ったあの時の気持ち、心情はよく覚えていない。
 覚えているのはその罪悪感そしてあの言葉。
 あのころから自分は皆と沙耶と一緒になって死にたかった。

 プログラム終了後、放任主義な親は人殺しの息子を受け入れず、怪我が回復したあとすぐ私物と封筒に入った20万円だけ渡され家を追い出された。
 止むをえなく蜘蛛の巣が縦横無尽に巡った薄汚れたアパートに一人住むことになった。

 一人は嫌だった。
 自分ひとり取り残されて、姿は変わっていって、でも写真に写る皆の姿は変わってなくて。
 やがて悲しくなって、しばらくすると死にたくなって。
 死のうとしてもあの言葉が防御壁となって死ねなくなって一人暴れる。

 変わりたかった。
 だから今この場所プログラムの担当官の道を選んだ。
 少しでもプログラムの傷に対する免疫を高めたくて・・・
 終わりのない階段を絶つため・・・

 しかし違った。
 周りはプログラムを遊戯として楽しむいかれた人間。
(ここでいうと篠原のような女だ)

 トトカルチョという賭け事にてプログラムを娯楽として楽しむいかれた富裕層や政治家。

 プログラムで出世を目指しているいかれた人間。
 屑ばっかりだった。

 歪んだ環境は俺をより追い詰めた。
 最初のプログラム担当官として勤めたときには、それはそれはまともに呼吸も出来ないくらい病んでいた 。

 ある日、2年生のころ仲良かった雪谷という女友達から電話が来た。
 5年ぶりに会話を交じらす彼女の口調は暗く、より俺の心をえぐった。

「あんた屑ね、本当に見損なったわ。別にあんたがプログラム優勝したから責めているんじゃない。あたしだってあんたと同じ立場だったら生き残るためにクラスメイトを殺すかもしれない。でもね担当官になるなんて信じられない… プログラム楽しかったの… あたしにはそうにしか見えない。あんたどうしたの… 何でそうなっちゃったの あたしの知ってるあんたは… 玲二は…」

 それからはわからない。
 しだいに声もかすれ、ヒステリックになっていく彼女の声を聞き、落雷を直に打たれた感覚に囚われ強く握っていた受話器を落とすと
しばし固まっていた。
 内容は現実とは違うところも数箇所あるが、陽気でフランクなイメージがよく似合う雪谷のそんな姿見たことはなかった。
 いやまぎれもなく自分がそうさせたのだ。
 しかし何故だろう狂いすぎてこの職を辞めなかった。
 更生のチャンスを捨ててしまったのだ。
 多分…多分…

「…女子三番が只今死亡しました」

 鼓膜がはちきれるばかりの馬鹿でかい声に、長い間思考と過去の世界に入り込んでいた遠峯は、それを予期できずに思わずハッと声をあげた。

「遠峯担当官。女子三番が只今死亡、加害者は男子一番。至急報告書を宜しくお願いします」

「わかりました、至急報告書を書きます」

 多分自分には終わりに続く階段など存在しないのだろう…

 残り2人


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