BATTLE ROYALE
終わりに続く階段


第23話

 自分の頭の中が序所に血の気が引いていった。
 何度揺さぶり起こそうとしても真紅に体を染めたゆうちんはその眼を開かなかった。
 脈はなく、死んでいることは火を見るより明らかなものだった。

 
七姫蓮(男子二番)は目の前の状況について理解できなかった。
 もはや血に染まった最愛の子さえ見えなくなってしまった。

 あらゆることが起きすぎた反動は大きく、頭の所要量は限界をとっくに超え、重々なパニックをかかえてしまった。

 母親のために生き残る。
 拉致、殺害、とーこ、とっしー、てっぺー、ゆうちん。
 この短い時間に起きた出来事が走馬灯のように巡るがごとく記憶が走った。

 急に眠くなって、知らない場所に拉致され、見知らぬ遠峯という人物に殺し合いを宣言させられ、プログラムと悟ったとき自分は生き残り母親と弟を守ることを理由にこのゲームに乗った。

 説明中にとーこを殺し、校庭でとっしーを殺し、雑木林で眞人も殺した。
 己を殺し、今まで築いてきた全てを崩す覚悟でやったことだ。
 しかしゆうちんは殺せなかった。愛した人だけは。大事な人だけは…殺せなかった。
 しかし彼女はもういない。
 てっぺーに撃たれて死んでしまったのだ。
 だがまだプログラムは終わっていない。
 
椎名未来(女子二番)はまだ生きている。
 そうだ彼女も殺して自殺しよう。
 そうすればゆうちんに会えるかもしれない。

 いつしか目が血走り、顔は青ざめ、形相はかの人虎として知られる李徴を思わせるものへと化した。
 もっとも狂気と化した理由は異なるが、家族を守るためにやったことが狂気へと変えたというのはある意味共通していた。

 七姫は大きく息を吐くと、そしてやまない雨に激しく吼えた。
 濡れた長い髪から露がこぼれ涙と混じり、咆哮はまるで周り全てを焦がす衝撃波にも映えた。

 あたりを見渡すと、七姫は察した表情を見せると、唇を強く噛むと、東南の方角へ趣に走った。
 彼を覆った雨はいつの間にか止んだ。

 残り二人



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