BATTLE ROYALE
終わりに続く階段


第25話

 本部の校舎にたどり着くと担当官だった遠峯玲二(担当教官)が煙草を加えたままで立っていた。

「お疲れ様だったね」

 少し悲しげにそういうと煙草の先から灰色の煙が北風に交じり消えた。

 本部に入ると暖かいココアが出された。
 湯気がたつそれを、私は遠慮気味に飲んだ。
 久々に飲む暖かいココアはお世辞なしにおいしかった。

 少し気になるのは遠峯が飲んでいるものの色だった。
 何を混ぜたのか…
 異色の存在にしか見えないが、そこはあえて気にしないことにした。

「とりあえず改めて優勝おめでとう、椎名さん」

 遠峯はソファーに腰をかけるとそういった。

「凄くつらい思いしたよね…俺もそうだった」

 えっ?一瞬頭が真っ白になった。
 遠峯の意図していることがわからなかったからだ。

「俺も優勝者だった。そこで多くの友達と最愛の彼女を失った」

 遠峯は深く寂しそうな顔をしていた。
 しかし驚愕した…この人は過去にプログラムの生き残りで、自分と同じく失う辛さを味わっていたのだ。

「俺は最後彼女に生きてっていわれた。だから今生きていける」

「だから椎名さんも生きてくれ。絶望しかなくても…」

 遠峯はにっこりと笑った。
 これは当分死ねないなと皮肉気に笑った。

 人相がよさそうな痩せた兵士に恐らくニュースに流すであろうビデオを撮られると、しばらくして私は病院へ運ばれた。
 幸い右腕の怪我だけで済んだ私は、一週間程度ですぐに退院することができた。
 病院から出たときの日差しはとてもまぶしく、数日前のあの出来事がまるで嘘のようにも感じた。

 そして地元を離れ、お父さんとお母さんと一緒に東京へと移った。


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