BATTLE
ROYALE
〜 終わりに続く階段 〜
第4話
「じゃあ次は誰にしようかな」
七姫蓮(男子2番)は赤くトッピングをされたカッターナイフの先端部分をペロペロキャンディーのように舐めながら、ロダンの考える像を超える勢いで深く考えていた。
そして女子のように伸ばした長い茶髪から時折覗かせるニヤリとした顔が不気味さをより際立たせ、サディスチックな雰囲気を醸し出していた。
「よし、決めた」
七姫は深くうなずくとスタスタと私のほうへと歩み寄ってきた。
ゾクっと背筋が振るえて首筋から嫌な汗が吹き出した。
それは恐らくいや確実に生理的に命の危険信号が激しく点滅しているのだろう。
気がつけば七姫と私の距離は5cm。
七姫自身顔の造りは2組屈指の美系なのでラブコメとかだったら絶対ときめいていると思うが、今はそんな状況ではない。
私は今蛇に睨まれた蛙。
七姫は蛙を睨んでいる蛇。
逃げようとしても足がすくんで動けない。
もう駄目だ・・・・・・
「やっぱや〜めた」
楽しそうな口調でそのままカッターナイフを床に放り落とした。
「なんかさぁこのままみ〜ちゃん殺してもいいんだけど何かつまらないんだよねぇ〜。
一方的にやっても全然つまらないしぃ。
そんなのいじめみたいで嫌だもん。
だから今はやめるよ。
でもゲームであった時は躊躇しないから」
助かった・・・・・・
私の脳裏には、もうそれしか浮かばなかった。
「じゃあ用件は済みましたか。じゃあ皆さんにはここを出発してもらいます」
用件じゃないよ殺されかけたんだよこっちは!
そう愚痴を零(こぼ)しながら思いっきり遠峯をややツリ目ぎみの目で思いっきり睨んだ。
「あぁ、山本君あれを」
「はい、かしこまりました」
山本と呼ばれた人相の良さそうな中年男性と思われる兵士は駆け足で教室を出た。
待つことジャスト30秒。
「おまたせしました」
やや間延びな声で山本は6人分のモスグリーン色のディバックを荷台に積んで運んできた。
「えぇっと最後に皆さんには、これをもってここからでていってもらいます。
ちなみにこの中には、食料、飲料水、地図、懐中電灯、携帯カイロ、コンパス、時計そして武器が入っていて、前にも言ったと思いますが武器は当たり外れがありますので気をつけてくださいね」
案外さきほどよりは淡々とした説明だった、
「では最初の出発者は大東亜が誇るスーパーコンピューターによって既に決めさせていただきました。
では発表させていただきます。男子4番柳生俊哉君」
「えっ俺っ?」
10個の目が柳生に視線を合わせる。
それはそうだろう。栄えある神奈川国際中学校栄えある最初の出発者なのだから。
当然彼らはそんな愛校心も愛国心も微塵も持ってはいないが。
「早くしてくださいね。
次に女子1番五十嵐桃子さんは死んでしまったので、男子1番楠哲平君には5分後に出発してもらいます」
俊哉は私物のスポーツバックを担ぎ、山本にディバックをもらうと早急に部屋から出て行った。
「はい男子一番楠哲平君」
「は、はい!」
このプログラムで七姫に次ぐ危険人物楠は、困惑と動揺そして恐怖のせいか顔面蒼白状態になりながら非常に不安定なフォームで走り、そのままディバックを受け取ると何かから逃げるように部屋から出た。
普段の優しく穏やかな普段どおりの彼だったら危険人物のリストには入らないが、既に精神は擦り切れ、狂人と化した楠は今や信用すら出来ない。
それほどこのプログラムは闇深く残酷な戦いだと私は改めて感じた。
「では男子2番七姫蓮君」
「はい!」
嬉しそうな声を腹から出し椅子から立ち上がると、ピクニックにいくような足取りでディバックを受け取った。
この殺し合いという殺伐したプログラムを楽しんでいる七姫は、もう私には恐怖の感情以外芽生えないだろう。
「七姫君、君には期待しているからね」
「えっ期待してくれるのですか、応援ありがとうございます〜」
そういうと七姫はそのまま部屋を出て行った。
「はい次は女子2番椎名未来さんですね。5分後に出発してもらうので準備してください」
とうとう私の番が来てしまった、
額からは冷や汗がたれ、顔は自然と強張っていた。
「不安そうですね」
「えっ」
「大丈夫ですよ、だからどうか落ち着いてください」
まるでカウンセラーのような口調で遠峯はそういった。
その中には殺気や嫌がらせといった不純物は入ってはなく、まるで純粋に私を慰めているような感じだった。
何か不思議と不安やモヤモヤが徐々に消えていき、底知れぬ安心感に包まれていく。
そう思えた、刹那。
パンッと外から乾いた銃声音が響いた。
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