BATTLE
ROYALE
〜 終焉の日にあなたは何を思う 〜
10
「おめでとう、横川さん。有園学園高等学校のスポーツ推薦決まったわよ。本当におめでとう」
穏やかな表情を浮かべたテニス部顧問徳山先生は嬉しそうにそういった。
横川翔子(女子18番)は一瞬耳を疑った、
有園学園高等学校とはスポーツが盛んな高校で特にテニスが強く、大東亜共和国を代表するテニス選手の多くを輩出してきたところだ。
自分が本当にテニスの名門有園学園高等学校へ受かっただなんて・・・。
翔子は努力家でテニスも勉強も両立し、先生からの信頼も厚く、かといって堅苦しくなく親しみやすいので女子テニス部の後輩の憧れの的だった。
仲のいいクラスメイトや部活仲間からの祝福を受け、今までテニスを一生懸命続けて、努力していてよかったなと。
あれから2週間後の今、そんな明るい未来はあっという間に壊されてしまった・・・
悪名高い戦闘実験六十八番プログラムに選ばれてしまったのだ。
震えがとまらなかった。冗談じゃないって、なんでわたしこんなに努力してきたのに・・・。
支給されたバッグを貰い、足早に劇場を抜けると香るのは血の匂い。
ふとあたりを見渡すと土屋香澄(女子十番)の遺体が転がっていた。
おそるおそる近づいてみると心臓部分に矢が生えており、死んでいることは明らかだった。
なんでこんなことに・・・
わたしはわけもわからずに急いで全力で逃げた。
走り続け、激しい息切れを起こし立ち止まった。
ひとまず落ち着いて建物の奥に腰を下ろした。
冬のひんやりした風が翔子の思考を覚ます。
好物の和菓子をおもむろに頬張っりながら支給バッグのジッパーを開いた。
支給されたバッグにはパンと水とコルト・ガバメントが入っていて、コルト・ガバメントを取り出した。
重々しい外見で、息をのんだ。
殺傷力は充分だろう。それをスカートのポケットにしまった。
とりあえず一人でいるのは危険だろう。
誰か仲間が欲しい。その一心で図書館へと入った。
ガラス張りの図書館の内装は思った以上に広く、思わずボーッとしてると、本棚越しに人影が見えた。
恐らくシルエットからして女子だろう。
「誰なの!?」
思わず声を荒げて、銃を構え呼んだ。
すると反応したのかすこしおどおどした様子で、菅野桜子(女子八番)が姿を現した。
「翔子さん?」
桜子は大和撫子な雰囲気を持った控えめな性格で、その礼儀正しさと容姿から男子からの人気も高い。
桜子の手には凶器らしきものは握られておらず、やる気はないようだ。
私も銃を降ろした。
「よかった。わたし一人で不安で不安で・・・」
そういう桜子の目からは涙が零れていた。
ずっと一人で寂しかったのだろう。
彼女は私に思いっきり抱きついた。
「ねぇ、翔子さん。ちょっと気になることあるんですけど」
そう言うと、返事をする前に首を絞められた。
首に強い衝撃が加わり何が起きているのかわからなかった。
「何するの・・・桜子」
普段の桜子とは違い、何かに憑依されたかのようなその歪んだ口元。
信じられないが、今私はあの桜子に殺されかけてる。
「こっちが質問したいくらいですよ。翔子さんはなんで私を見かけたとき武器をとって殺さなかったのですか? もう抵抗しても無駄だと思って涙止まらなかったのに。なんですか、この拍子抜けは」
腕の力が更に強くなっていき、頭がボンヤリし始めた。
まずい。このままじゃ死にたくない。
スカートのポケットから思いっきりコルト・ガバメントを取出し、
「ごめんなさい!」
やけくそに発砲した。
桜子にかすりもしなかったが、腕の力が抜け、それを思いっきり払って逃げた。
桜子は翔子が逃げたのを確認するとクスっと笑った。
「ごめんなさい。って本来私が使うはずの言葉なのにな・・・」
「変な人」
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