BATTLE
ROYALE
〜 終焉の日にあなたは何を思う 〜
7
半数以上の生徒はこの舞台を抜けこの広いキャンパスへ駆け出したであろう。
残された生徒は死刑宣告のように息苦しい時間を過ごしていた。
「では女子三番叶ゆきなさん出発してください」
叶ゆきな(女子三番)が出発した。
普段天真爛漫な性格で女子運動部の妹的存在だった。
男子や他のグループからもその明るさから人気も高く、他クラスには一部の男子からカルト的人気があったと噂もたっているが、ゆかから聞く話によるとゆきなは園部貴之(男子七番)に盲目なほど恋をしており、彼等の妄想は妄想のままで終わるだろうと他愛のない会話を送った記憶がある。
そんなゆきなが涙をこらえ、とぼとぼと怒られたような小学生のように歩く。
ゆきなに兵士が怒号を上げた。
酷いなと思いつつも今度は逃げるかのように荷物を持つと駆け出して消えた。
その姿を幼馴染の佐伯ゆか(女子四番)は不安そうに見ていた。
出席番号も近い二人はメンバーのなかでも特に仲がよかったからだろう。
友達として当然だ。
東雲悠(男子四番)は心の中で焦っていた。
これからのプラン、方針、卓上の理論すらまともに整ってなく、数分後に自分が殺し合いに参加するのはとても不安だった。
だが時は残酷なものだったりする。
次々と他の生徒が出発していく。
カチカチと時を刻むアナログ時計は予定の時間にたどり着いた。
「では男子六番東雲悠君、出発してください」
スッと立ち上がると平然とした顔で荷物を持ち外を出た。
あの湿った空気に長時間いたからだろう、新鮮な空気を吸い込み、気持ちを入れ替える。
後5分後にゆかが来るだろう。
そうすれば冬馬と二号館で合流できる。
しばらくすると小柄な姿にニット帽が眼に入った。
自分より強いのか、それとも単純なのか、ゆかの表情はいつもと変わらなく自分を安心させた。
「お待たせ、悠」
「大丈夫だ、早く行こうぜ。もう冬馬はとっくに着いてると思うし」
そして足を運ばせた時、物音がするともうひとつの小さな影が動いた。
「ゆか…私のこと置いていかないでよ」
眼を真っ赤に腫らしながら、先ほど出発していったはずのゆきながこちらを見ていた。
正確にはゆかだけを見ていた。
「ゆきな、大丈夫?」
と声をかけると、ゆきなはゆかに思いっきり抱きついてきた。
ゆかは勢いにバランスを崩しながら驚いた顔をしていた。
「よかったよかった。ゆきな本当に心配で怖くて…でもゆかに会えてよかった…ゆか私と一緒に行こう、独りじゃ怖いの」
「うん一緒に行動しよ。あとこの馬鹿ともう一人馬鹿が付属してくるけどいいよね」
「馬鹿とは心外だな。てか、この前のお前の成績は何なんだよ。それでも受験生かよ」
「わたしが言ってるのは成績とかじゃありません。中身の問題なんです」
和やかなムードになると思ったが、それは大きな間違いだった…
ゆきなは非常につまらなそうな顔をしながらこちらを見ると、
「何でこんな奴がついてくるんですか… しかももう一人って牧園君でしょ、絶対に嫌です…ゆきなはゆかだけでいいんです。他は要りません!」
この一言は一瞬にしてその場を凍らせた。
まさか天真爛漫がここまで悪い方向に持ってくるとは思わなかった。
最初は害がないと思い、普通に接していたが、甘えん坊がここまで過ぎるとめんどくさいなと痛感した。
「そんなこといっちゃ駄目だよ。ほら一緒に…」
咎めるゆかを横目にむき出しの殺意をこちらに向けるように、ゆきなの支給武器ダイバーズナイフは自分の心臓を蛇のように狙っていた、
初めて凶器を突きつけられた瞬間、顔は自然にこわばる。
「ゆきな! もうやめて!! ごめん…悠、お願い先に向かってて」
「でも…」
「いいから、早く消えて! あんたの顔なんて見たくない…」
クソッと小さく呟くとゆきなと一緒に茂みの奥へと消えていった。
早くゆきなを巻いてくれることを祈りつつ、二号館の方角に急ぎ目に走った。
不安で仕方なかったんだ。
自分があの時怖気づいたこと、ゆかを救えなかったこと、ゆかに何かあったらどう償えばいいかわからなくなった。
でももう遅かったんだ。
残り33人+α3人