BATTLE ROYALE
〜過去から現在(いま)へ〜



 教室では野中秀勝(男子15番)、阿部雅実(女子1番)、飛騨弘(男子17番)が昼休みお決まりのコントをやっていた。
「せやからなぁ、そこで言うてやったんや!」
 大阪弁が特徴の自称“半不良”の野中。
「お前はオレが好きなんやろ〜!ってなー…」
「バカじゃないのー。そんな事、無い無い〜!」
 よく笑うクラスのお調子者、バカ代表と言われている阿部。
「そこは、相手さんがなんでやねん! じゃない?」
 2−A突っ込み担当、飛騨。
「それはシケるよー。うちなら、多分何にも言わないけど、めっちゃ叩いてると思うけど」
と言いながら爆笑する阿部。
 いつものようにB組からは篠川遼太郎(しのかわ りょうたろう)や仲吉元太(なかよしげんた)も来ていた。

 そんな教室の爆笑の渦の中で須来は叫んだ。
「――もう一回、言うぞ…」
 もう一回…? と、誰かが呟いた。
「加勢、先生が…A組全員……、体育館に集まれって…」
 静まり返った後、教室のあちこちから愚痴が聞こえ始める。
「えぇ〜? まじ? ちょっとみんなー、めんどくさくない?」
 そう言ったのは阿部。
 ほとんどが同意して、また話に戻ろうとする。
「仁先生、今度は何やる気やねん!」
 野中が言った。
「ま、しゃあないな〜。行こうや〜みんな。解散、解散〜…」
 野中が嫌々ながらも全員を動かす。
 自分の組に帰って行く者、席を立って出て行く者。
 全員が出て行った後の教室には須来と野中だけになった。
「悪りいな須来、もう一回って言っとったやろ? 一回目聞いとらんかったわ…。
すまん。あかんな、わい。いや、周りが目に入らんようなる」
 分別のある野中だったから、クラスで人気がある。
「良いよ、野中。それよりもみんなを体育館に連れて行ってくれてありがとうな」
 疲れたような顔で、須来が言った。
「そんな疲れてないやろ!?」
 ドン、と前かがみになっていた須来の背中を、野中が叩いた。二人は陽の陰り始めた教室を出て行った。
 開いた窓から、木に残っていたのか、枯葉が一枚、教室の中に舞い込んだ。



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