BATTLE
ROYALE
〜過去から現在(いま)へ〜
23
組み立ては完了していた。
手元が見える頃まで待ってから組み立てを開始するつもりだったが、あまりに暇なので、電球にガムテープを貼って手元で電球を点けて3時頃から開始した。もちろん、すぐに完成するつもりだったから、暇つぶしにも過ぎないと感じていた。
が、しかし、実際は説明書の通りに組み立てたが、3時間はゆうにかかった。
「良い暇つぶしになったな、一応」
この地上10m、海抜およそ50m以上の場所なら、射程範囲は1kmに下らないだろう。
――しかし、無駄撃ちは出来ない。
森の中がまだ確認出来ない時間にも、森の中には確かに人の気配はしたが、その全員を殺すわけにはいかないのだ。
全ての人間を一発で仕留めても、弾は僅かに30発しかない。しかも、あまりに遠い場所の人間は、殺しても武器の回収に行けない。
その間にこの塔を占拠されては元も子もない。
故にこれからは、ここから狙撃した人間の武器を奪いながらも、遠くの人間はみすみす逃すしかない、という事態もあるのだ。
正直に言えば、あまりそういう事はしたくないが、ただ殺すだけでは意味が無い。そう自分を納得させた。
キムの放送がそれから暫くしてあった。まだ11人しか死んでいないと言っていたが、よく考えれば、11人分の武器が誰かの手に入ったのだ…。
「俺も誰か殺そうかな、そろそろ良い具合に明るくなってきた事だし」
スコープを覗いた。
夜の間はそのレンズ越しに、誰も見えてこなかったが…、今は、2−A辺りに人影があった。
そこは障害物の全く無い場所だ。ここからは…900mという所か?
――かなりの距離があるが、当てる自信はある。
武器の調整を行い、近くのガムテープをガラスに貼った。台尻でガラスを割る。
ヒュウと冷たい風が入ってきた。
スコープの調整も終え、また覗きこんだ。二人はまだそこに居た。
ゆっくりと狙いをつける間に、俺は知らず知らず読口していた。
――…波、じゃあ君は、攻撃されたら、撃てるかい? 人を…。
スコープで拡大されているもののやや読み難い。
――けど、あたしは、死にたくないわ、少なくとも、耕作と一緒じゃなきゃ、嫌よ。死ぬにしても…。
――じゃあ…、僕は、ここで終わりにしたい。君に撃たせたくはないし、君を撃たせたくも無い。ここで、僕は…――。
立川耕作の口はそこで止まった。
俺が引き金を引くと、嘘のように胸に穴が開いた。一撃で、だ…。
すぐに、空になった薬莢を一つの動作で済ませて、何がおきたのか理解できないらしい宇野小波に照準を合わせた。
――重力の影響を考慮して、やや上を、狙う。
口を開きかけた宇野小波だったが、一瞬にしてその頭は消し飛んだ。
「一発、外したかな…。」
呟きながらまた薬莢を排出して、一応、数十秒確認した。
が、もう動き出しはしなかった、二人とも…。
“GIAT FR−F2”を持ったまま、俺は鉄製の螺旋階段を降り、武器の回収に向かった。