BATTLE
ROYALE
〜過去から現在(いま)へ〜
4
昼休憩、校長室の横の生徒会室には須来安珠(男子7番)と2学年担当執行委員、真辺黎(男子18番)、会長2−B、姫沙率(きさ ひつい)、会長補佐2−C組、冷泉夾(れいぜい きょう)の4人以外のメンバーがいた。
「安珠君、用があるんだよねぇ。でもさ、居ないとつまんないなぁ」
ややチャラチャラした感じの1学年担当執行委員のD組、三留沙也加(みとめ さやか)が愚痴を言う。
沙也加は進んで生徒会に立候補したわけではないが、放課後、暇なので入っていた。
実際、人の役に立つ事が嫌いなわけではなかった。
「良いじゃない。須来先輩も大変なんだし、ねぇ、紀先輩、春菜先輩」
もう一人の1年執行部、杉原真琴(すぎはら まこと)が嗜める。
「そうよ。立候補した以上は、つまらない、とか言ったらだめだよ」
校内で“四季”と呼ばれる1人の2−D組、須藤春菜(すどう はるな)も賛同する。
4人のうちの3人は皆、体育館に呼ばれていた。
入り口近くの椅子に座っている副会長の中泉院紀(ちゅうぜんいん のりこ)も頷く。
紀は中国3家と呼ばれる有名な家柄の次女だった。
――この学校は3家の分家にも近い位置にある為、それぞれの家の子供が全員通っている。
「はぁ〜、正直〜強制的だったって言うかぁ。暇なときは良いんだけどさ、昼休憩、必ずここに来ないといけないってのが嫌なのよねぇ」
「言わないのが約束よ。選挙だって2ヶ月前なんだしさ」
大体の時は、姫沙と夾は生徒会室に来なかったし、真琴と沙也加の2人の会話が中心だった。
そんな中、校長室から声が聞こえてきた。
「そんな! まさか! そん・・・な。2−Aですか・・・!?」
2−Aという言葉に春菜が微妙に反応する。
その時、生徒会室のドアが開く。
「痛てぇ。やめろよ、っつ、だから・・・」
会長補佐の夾だった、が、珍しく生徒会室に来た夾よりも、全員の目線はその後ろの人間に注がれていた。
――桃印のバッジを付け、銃を持った兵士。
「何事ですか!」
威厳のある声で紀が兵士たちに呼びかける。
「うるせぇ! ぐだぐだ騒いでるとぶっ殺すぞ!
――おいガキ、てめぇ、何盗み聞きしてやがった! えぇ? 言ってみろ!」
紀を無視し、夾に怒鳴る。
「るせぇな・・・。良いだろ・・・。それより2−Aがどうしたんだよ!?」
喧嘩っ早い夾は物怖じもせず突っ掛かる。
「夾! お止めなさい! ――・・・一体、何があったのですか?」
立ち上がる紀。
「あぁん? るせえよ! ――てめぇ・・・中泉院だな?」
薄笑いを浮かべる兵士。
その目の前に堂々と立っている紀。
真琴と沙也加、春菜は遠目で見守りながら机の陰に隠れていた。
「そうです。中泉院紀です。何用ですか!? ここ(学校)に彼方達の様な人は立ち入るべきではない!」
「なめるなよ? ガキが!」
そう言い切った瞬間、生徒会室の中には“パパパパッ”という銃声が響いた。
床には目の前に居た紀、机の陰から出、紀を止めようとしていた真琴の血。
「紀さん! 真琴ォ!」
沙也加が紀に駆け寄る。
紀は微かに声を上げていた・・・。
「くそやろォ!」
夾は真琴に向かう。
血が床を伝う。
くそっ・・・。
オレのせいで・・・。
夾は血のついた手を握り締める。
その掌から出た血は真琴の血と混ざり合っていた。
「何したのよぉ! ねぇ! 答えなさいよ!」
沙也加が兵士の腕を掴んでいる。
やめろ・・・!
そう叫ぶ間も無く、沙也加の頭が消し飛ぶ。
「いやぁ・・・」
春菜が後ろで泣き崩れる音がした。
「くくくっ。てめぇらも死ぬか?」
兵士が銃を構える“チャッ”という音が聞こえたが夾は動けなかった。
ただ、銃口をこちらに向けている兵士とその後ろの姫沙を見ているだけだった。
――あれ、さっきと違う・・・。
夾は思った。
確か・・・、姫沙は篠川と話していたのに。
「ばか! 逃げろ!」
姫沙が兵士に馬乗りになっている。
兵士の銃ごと手を押さえているが、その銃口は時々、姫沙の方を向く。
夾は我に返った。
「春菜! 行くぞ!」
放心状態の春菜の手を掴む。
――そう言えば今まで手すら握った事無かったな・・・、
なんて他愛の無い考えが頭に浮かんだ。
“四季”グループの一人で、明るい女の子だった。
――夾は魅かれていた。
「春菜、先に逃げろ」
そう言って、春菜をドアの前まで連れて行く。
が、その時後ろで姫沙が払い除けられる音がした。
――ゲームオーバーですか・・・?
壁に寄りかかっている春菜に覆いかぶさる様にして夾は最後の時を待った。
自分の体に穴・・・。
――頭にあったらマトリックスみたいだな・・・。
しかし、その時は来なかった。
ドアが開くと、そこからもう一人の兵士が顔を出してきた。
「バカやろぅ! 田原! 人様の学校でなにやらかしてるんだ!? あぁ? そんなんだから、テロが止まないんだろうが!」
一喝し携帯を取り出し、二言三言しゃべると無線を取り出した。
「あー、こちら宮奥、田原が少しやらかしてしまって・・・はい。
立代第2でプログラムの説明を・・・あ、はい、そうです・・・。
ですので、事故処理をお願いできますか?
・・・はい、救急隊員はこちらで呼びました・・・はい。
分かりました・・・申し訳ないです・・・はい、失礼します・・・」
夾、春菜、姫沙は呆然と佇んでいた。
自分たちが死なずに済むらしい、という事しか分からなかった。
「田原! 覚悟しとけよ!」
そんな声が聞こえたが、夾の意識は急速に遠のいて行った。
――紀さん・・・、真琴・・・。
気付けば、病院だった。
右隣のベッドには、春菜、左隣のベッドは、紀さんがいた・・・。