BATTLE ROYALE
〜 死神の花嫁 〜


[甘い陰謀(ハリス・アレグジール)]

 岡田尚之(アニキ:男子04番)と川上優(ユウ:男子05番)の激しい密談から約2分後・・・ほぼ無防備な状態で、エッジこと古賀英次(男子06番)は出口に立った。
 夜の帳が、エッジから光と熱を奪っていくようだ。
 目をつぶって大きく深呼吸をしてから、建物の外へ一歩踏み出した。
 2秒ほど待ってから、左手の方向へ移動を始めた。
「エッジ、こっちだ」
 待っていたかのように声が掛かった。
 予想通りの人物から 予想通りのタイミングで呼ばれたので、思わず失笑してしまった。
 エッジが目を凝らして数メートル先の茂みを見ると白いモノがひらひらと動いていた。
 アニキが、手招きをしているのだった。
 自分が出発する前に、雄叫びが聞こえた。
 エッジにとって聞きなれたアニキの叫び声だった。
 ゆっくりと進んでくるエッジに もどかしくなったのか「早く来い!」と、アニキは命令した。
「よく見えないから・・・危ないだろう?」
 エッジは悪びれた風も無く言ってのけた。
 茂みの所まで行くと、アニキが早速切り出した。
「おい、今から出てくるヤツを仲間にして、この建物を襲うぞ」
「はぁ?」
 予想の範囲内だったとはいえ、あまりにもレベルの低い提案に、思わず妙な声を上げてしまった。
 暗闇に慣れてきた目でアニキを見ると、鼻の穴が膨らみ目が微妙に血走っている。
 何か興奮するような事があったのだ。
「あいつに・・・ユウにも今の話を?」
 エッジは確認をするように訊いた。
 アニキはエッジを睨むと、歯軋りをしながら
「あいつは、オレをコケにしやがった。絶対に許さねえ!」
 と、声を荒らげた。
 ───さっきの叫び声は、ユウにやり込められた時のものか。さて・・・
 エッジは一瞬迷ったが、出来るだけ平静を装うと「ヤツの言う事も一理あるぜ」と、短く言った。
 アニキがキレるタイミングは判っていたので、その前に抑えようと、間を置かずに続けた。
「まず、アニキはさっき『てめえら、真面目にやらねえとぶっ殺すぞ!』って言ってしまっただろう? あれがマズイ、印象が最悪だ。元々オレ達に賛同するヤツばかりじゃないから、ヘタすりゃここでやりあう事になる。何人かは倒せるだろうけど、オレ達が殺ったことが判ったら、他の連中は確実に敵に回るぜ。あと、オレが出てくる時、奴らの司令室みたいな部屋がちらっと見えたんだが、まだ十人以上兵隊がいた。仮にあのクラスの残りの連中を全て仲間にしたとしても、返り討ちに会うのが関の山さ」
 ここまで一気に言うと、アニキは呆然とした。
 自分なりに考えたプランは、全く意味がないと腹心に言われたのだから当然だ。
「ど、どうすればいいんだ?」
 アニキはエッジの腕を掴みながら言った。
 ふうっと息を吐いて、エッジは場所を移動した。
 ノコノコとついて来るアニキを見て、笑いを堪えるのに必死だった。
 出口右側の植え込みに場所を移すと、アニキに向かって言った。
「確実に仲間になるヤツだけに声を掛けるんだ。誰が仲間になると思う?」
 アニキは頭の中で何かを反芻をすると
「佐々本、カズ、ヒロシ、ナリ、デスカラ、ケン、コツ。女子はナンシー、ジュン、高見沢、藤井…それから・・・・・・」
 指を折りながら名前を挙げて行ったが、エッジはそれを止めさせた。
 明かに動揺がみえる上、判断力まで鈍っている。
 もう既に死んでいるヒロシを挙げたのがいい証拠だ。
「残念だが、そんなに仲間になる訳が無い。逆になったとしても、後でもめる元になっちまう。とりあえず、オレ達の仲間だけを集める」
 ここで確認の為に言葉を切った。
 アニキが呆然としつつもうなずくのを待って、続けた。
「オレ達の仲間で4人。ナンシーやジュンが入ったとして、全部で6人だ。それ以上は逆に声をかけないほうがいい。オレ達がここにいる事を教える事になるからな」
 うんうんとアニキは何度かうなずいている。エッジは一呼吸おくと、自分のプランを語った。
「その6人で…」
 エッジのプランを聞いて、アニキの顔に生気が戻ってきた。
 上手く事が運ぶかどうか・・・それはエッジにも判らなかった。

【残り 36人】


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