ヒメボタル
ヒメボタルの生態
 一般に、ホタルといえば、よく発光するゲンジボタルやヘイケボタルの成虫を思い浮かべる人が多いと思います。これ らの幼虫は、水の中にすんでいて、人の目に触れることはほとんどありません.残念なことにほとんどの都市河川では 水質汚濁が進み、幼虫時代を水中ですごすゲンジボタルやヘイケボタルと、その餌となるカワニナなどの巻き貝の仲 間はすめなくなってしまいました。ところが、ヒメボタルは、ほとんどのホタルのなかまと同様に、陸上で一生を送るため に、水質汚濁の影響を受けずにすみました。雑草のはえた河川敷や竹やぶなどの意外に身近なところに、このホタル はすんでいたのです。ここでは、あまり知られていない愛知県内のヒメボタルの生態を紹介します.
(成虫)
 名古屋市や岡崎市のヒメボタルは、5月中旬に成虫になります.そして、6月上旬まで、成虫の発光が観察できます。 成虫がみられるのは一年のうちで、たった3週間の短い期間だけです。この成虫は、ヘイケボタルよりもさらに小さく、 その体長は、おす9〜10mmめす6〜7.5mmぐらいです。よく知られているゲシジボタルの体長が10mm〜20mmで すから、その小ささが想像できると思います。大人の男子では指でつまみ取るのがむずかしいくらいの大きさです。め すのほうがやや小さいのは、ゲンジボタルやヘイケボタルと違うところです。ヒメボタルの発光は断続的(愛知県内の発 光間隙約1秒)で強く、黄金色がはっきりしていることから、ゲンジボタルやヘイケボタルとは簡単に見分けがつきます. 成虫の発光時間帯は、午後9時頃から午前3時頃までですが、たくさんのおすが発光して飛翔するのは、日没直後の数 時間のところ午後11時をすぎてからのところがあるようです。名古屋城では午後11時から午前1時頃までが最もよく 発光する時間帯といわれています。よく光る時間帯が遅いため、一般にはあまり知られていませんが、川辺の草むら や竹やぶなどに多く生息しています。名古屋市近郊では、名古屋城の外堀、新川、庄内川、香流川、境川、矢作川の 河川敷、大高緑地の草むらや天白区、守山区、名東区の竹やぶなどのかなりたくさんの場所で、その生息が確認され ています。ただし、同じ河川敷でも、たくさん発生する場所とそうでないところがはっきりとわかれていますが、草むらの 外観からは区別がつきません。
 飛べるのはおすの成虫だけです。めすは発光できますが下はねが退化しているので、飛ぶことができません。そのた めに、めすの成虫が歩いて移動できるごくわずかな範囲に産卵するようです。成虫になると水分の補給をするだけで何 も食べないので、成虫の寿命は、おすで約1週間めすで2〜3日間とされています。交尾しためすは、土の中に淡黄色 球形で、約0.6から0.7mmの大きさの卵30〜90個(人工飼育では約60個)ぐらいうみ、うみ終わると死んでしまうといわ れています。名古屋城外堀では、クズなどの植物の根本にある柔らかい土の中に産卵すると考えられています。
(卵と幼虫)
 土の中に産みつけられた卵は約3週間でふ化し、体長約2mmの幼虫となります。一般に、幼虫の生息場所は草むら 内部の土の中で、特に、湿り気があってえさの巻き貝が多くすんでいる場所とされています.矢作川の河川堤防では、 ススキやイタドリが多くはえている草むらに多いという報告があります.幼虫は、陸生の小型巻貝のなかま(オカチョウ ジガイ、キセルガイ類、カタツムリ類など)を食べて大きくなります。最近では、ミミズのなかまを食べているところも観察 されています。名古屋城では、1年目の秋に体長3〜4mmとなり、寒くなると幼虫は冬眠するとされています。春になると 再び活動を開始し、ふ化してから1年10ヵ月後体長12mmにまで成長し、成熟した幼虫は4月頃、土の中でさなぎとな り、約1ヵ月後の雨降りの翌日かその翌々日に、土のうを破って羽化し、成虫となると報告されています。しかし、ほか の産地では、1年で成虫になるとの報告もたくさん出されています。生息場所の環境条件が地域ごとに違うのではっきり わかりませんが、どちらも場合もありうるのかもしれません。
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